第五話
今日は一体、何を書こうかな…
少し出来た空き時間、僕はいつも決まった店じゃないけど、似た系統のスマホの充電が確保出来るお店によく休憩で入っていた。
本当に何をするわけでもない。
ただ、足が疲れたから休憩…とか、なんとなく時間が余ってるから休憩…みたいに、あまり時間に囚われない生き方をしている。
そんな中、人の気持ちを妄想する…という趣味を見つけてしまってから僕は、目的がよくわからない妄想話を、浮かんでくるままにつらつらと書き上げては、投稿を続けていた。
でも、最近…検索しても、気になるワードがなくなってきたんだよなぁ。
前までは、BLドラマに抜擢されることが良いのか悪いのか、一度そういうドラマに出てしまうと、BL俳優としての仕事が続いてしまうんだろうなぁ…とか、相手の俳優さんとの距離の取り方を考えたり、ライブ配信でどこまでの情報を言っていいのかとか、考える話をいろいろ僕なりに妄想しながら書いてきたけど、情報源なんて、結局は検索して出てくる何かの記事だったりするだけだから、本当のところは何もわからなかったりする。
自分は今まで一体、何を書いていて、何を書きたかったんだろう…
突然ふと湧いてきた疑問。
僕は背中を丸めてテーブルに両肘をついた姿勢をとりながら、両手で握り締めているスマホをゆっくりと操作し始める。
アクセス数は38…
回っているけど、ちゃんと読んでくれてるのかもわからない。
だって、投稿記事のページを開くだけでアクセス数って回るしな…
そう思いながら、投稿サイトのマイページを眺めていた。
最初は読者がいなくても、気にならないと思っていた。
だって自分が書きたくて書いてるから…
でも今は、投稿する度にアクセス数を確認して、どれだけ回るかな…と毎回チェックするようになってしまっていた。
そしてついに今日…
いよいよ、自分が書きたいものがもうないように感じられた。
今まで自分は、何が楽しくて人の気持ちを考えてたんだっけ?
何をしたくて、妄想していたんだっけ?
最初の書きたくなっていた気持ちももう思い出せない。
まるでわかったように書いていた妄想の中の若手俳優の気持ち。
でも、結局は本当の人の気持ちなんてのは、僕にはわかるわけないんだよなぁ…
そう思うと、この少し回るアクセス数と、…僕の投稿を読んでくれている人たちは、一体何が読みたくて…何を求めて、僕の投稿にアクセスしてくれてるんだろう…と、急に人の気持ちがわからなくなってしまった。
いや、本当は元から何もわかってなかったんだ。
それなのにわかったつもりになって…
そう思うと、自分の書きたいものがわからなくなって、この若手俳優が何を考えてるかも、全くわからなくなって…
読んでる人の気持ちなんて、余計にわからなくて…
僕は誰のために、何のために、この話を書き続けているのか、いよいよ… 何の文字も打てなくなった。
まぁ、無理に書くものでもないもんね。
そう思うと、ふぅ…小さく息を吐いて僕は、スマホをテーブルの上に置くと、ゆっくり背もたれに体を預けながら、足を伸ばして、真っ暗になるまでスマホの画面をぼんやり眺めていた。
そして僕はそれ以降、自ずとスマホのメモ帳を開くことがなくなって、投稿サイトもどうなったのかは、わからなくなった。
あんなに人の気持ちを妄想することが楽しかったのに…
急に人の気持ちがわからなくなってしまった。
みんな、何を考えて生きているんだろう…
そう思いながら、僕は今日もまたぼんやりと…外が見えるカフェのカウンター席で、頬杖をつきながら、ガラスの外の人の流れを目で追っていた。




