【視点】賭博場で全てを失った
洗濯魔導機を持ち上げて骨折をしてしまってから数日。
ザーガルの腰痛は少しだけ軽減し、ようやく外に出れそうになっていた頃、顔を青ざめながら恐怖に震えていたのである。
「ベルベット……これはさすがにマズイ。気がついたらジュリアから借りていた金が半分になってしまっている」
もしも借りたお金で稼げずに返済ができなかった場合、より地獄が待っていることをザーガルは知っていた。
だからこそ、骨折中にベルベットが単独で賭博場へ行き、金を使い込んでしまったことを責めていたのである。
「大丈夫。四回連続でマイナスになっただけなのよ。今まで五回連続はなかったの! つまり、次行ったときは必ず勝てるってことよ」
「つまり……?」
「次回行ったときに全額掛ければ三倍くらいにはなるわよ!」
「なんだって!? ならば私も一緒に行く!」
ベルベットの自信に満ちた顔を見て、ザーガルも確実に儲かると思い込んでいたのだった。
「でも腰は?」
「洗濯魔導機を持ち上げて腰痛になった程度で騒ぐことではない。今は金のほうが大事だ! 行くぞ」
二人は持っている全財産を持ってガージーノルレットへ出かけた。
♢
「……くそう、さすがにまずい。ベルベット、次負けてしまえば一文なしだ。借りた一萬紙幣五千枚全てなくなってしまう」
「私に任せて! 破滅しないような、幸せになりそうな数字にしましょう! 一五……!」
案の定、結果は一九だった。
この時をもってザーガルとベルベットは一文なしになり、外へと出ることになった。
「ベルベットにカジノという素晴らしい投資を教えてもらったのに……最初は上手く稼げていたのだが……」
「おかしいわね……五回連続でマイナスなんて今までなかったのに! 次行けばきっと!!」
「その次がもうないのだ……」
参加賞の飴玉を握りしめながら、ザーガルは悔しそうにそう言う。
「もう一回借りればいいのよ。ジュリアさんならきっとわかってくれるはず」
「しかし、そのジュリアもずっと留守にしているのだぞ。しかも連絡がない。まさかじゃないが病気にでもなってしまったのか……心配だ」
ベルベットは度重なるジュリアの話を聞いていて限界だったのだ。
負けたストレスも加わって、今まで不満だったことを話し始めた。
外で誰が見ているかもわからない状況だというのにも関わらず、ザーガルの腕を両手で掴み甘えながら。
「毎日私とイチャイチャしているのに……ジュリアさんの心配ばっかり……」
「それは当然だろう。ジュリアは大事な妻だ。ベルベットには何度も言って申し訳ないが、身体の行為も練習のためだ。ジュリアに満足してもらうためにだ」
「そう……」
ザーガルがジュリアのことを口では好きでと言っていることは理解していた。
だがそれでも、いずれ二人を離婚させて自分の旦那にすることだけをベルベットは考えていたのだ。
ジュリアがいない今が絶好のチャンスだと思い込んでいたのである。
「それよりも一文無しだ。金がない! どうしたらいいのだ!?」
「どっかから借りるとか?」
「それも出来ん! 以前に借りようと金融機関へ向かったことがあったのだが、私は何故か断られてしまったのだ。ジュリアがいるから信用されていると思ったのに……」
「かなりヤバくない!?」
「だからさっきから焦っているのだ!」
二人揃って絶望を感じながら家へと戻っていく。
しかし、このあと更にとんでもない事件が起きてしまうことを、知る術もなかったのだ。




