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【視点】洗濯魔導機を不用意に持ち上げてはいけない(後編)

「洗濯魔導機の近辺で出たのだな?」

「そう。全く……ジュリアさんったらゴッキーの対策くらいしておいてほしいものだわ……」

「全くだ。留守にするなら家のことくらいは万全にしておいてもらいたかったな」

「もしかしたら洗濯魔導機の下にいるかもしれないわよ!」


 ザーガルは恐る恐るホウキを持ちながら洗濯魔導機の底側をガサゴソと漁る。

 ジュリアが手入れをしていたおかげで、埃もほとんど出てくることはなかった。


「くそう、隠れるとは卑怯なやつだ。だが出ないでほしい……」

「なんで弱気なこと言ってんの!? 洗濯魔導機どかして調べてみたほうがいいわよ!」

「そんな遠くから言わないでくれ。それに……まさかこれを持ち上げるのか!?」

「ザーガルならできるわよ」


 ザーガルは以前にベルベットに力自慢をしていたのだ。

 実際にはザーガルは一般的な男性筋力程度だが、幼馴染の前だと強いフリをしていたかったのであった。

 だからこそ今回は引くに引けなかった。


「ふん……このくらい……」


 ザーガルは洗濯魔導機を両手で掴んだ。


「ふんぬーーーー!!」

「わーさすがザーガルね!」

「褒めるのは後にしろ! 下にはゴッキーはいるか!?」


 脂汗を流しながら必死になって叫ぶように言った。


「いないみたい」

「そうか、では下ろす。よいしょ……」


 ──バキッ!!


 洗濯魔導機は元の位置に戻されたのだが、ザーガルの腰から骨のなる音がしたのだった。


「ベ……ベルベットよ……動けん」

「どうしたの?」

「腰が痛くなってしまった。今下手に動けば間違いなく痛い!!」


 ザーガルは強がりを言っていられる状況ではないくらいに痛みを隠し切れないでいた。


「くそう……たかが洗濯魔導機ごときを持ち上げたくらいで……」

「え……!? 本気で言っているの?」


 いたずら心でベルベットはザーガルの腰をパーンと叩いてしまった。


「ぎゃあぁぁーーー!!」


 痛みでその場に倒れてしまった。


「本気で怪我しちゃったのね……。少し休んでて、ゴッキーがいないことはわかったから、これで洗濯魔導機は起動できるようになったわ」

「今はそんな場合ではない!!」


 そのときだ。

 洗濯魔導機の排水口から黒い物体がカサカサとコミカルに動いているのをベルベットは真っ先に目撃したのだった。


「きゃーーーー!! でたわーーーーー!!」

 ──カサカサ……。


 ザーガルの周りをカサカサ動き回り、やがてザーガルの体の上を動き回っていた。


「ぎゃあぁぁーーー!!」

「無理無理! ザーガル! あとはなんとかしといて!」

「バカを言うな……今はそれどころでは……」


 ──カサカサ……。


 黒い物体はザーガルの身体を気に入ったらしく、しばらく身体から離れることなくカサカサと動き回っていたのだった。

 ベルベットはお構いなくその場から脱出するように逃げていったのだ。


「痛くて動けん……助けて……」


 ザーガルは痛みと気持ち悪さで身体中から滝のように汗を流す。

 だがそれを黒い物体は好んでいたため、なかなか離れようとはしなかったのである。


 ♢


 しばらく時は流れ、夜になった頃、ようやく一時的に痛みに慣れなんとか立ち上がる。

 黒い物体もすでに何処かへ消えていた。


「くそう……この腰の痛みはただ事ではない……。水浴びしたいがとてもじゃないができん……」


 ザーガルが痛がるのも無理もなかった。

 無理に力を入れたために骨が折れていたのである。


「ジュリアよ……こんなときに君がいてくれたら助けてくれただろうに……早く帰ってきてくれ。頼むからあぁ!」


 しかし、ジュリアはこの頃すでにザーガルと復縁することは微塵も考えていなかったのであった。

 しばらくの間、ザーガルは腰痛と闘いながら過ごさざるをえなくなったのである。

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