【視点】洗濯魔導機を不用意に持ち上げてはいけない(前編)
「ベルベット……最近使用人として仕事を疎かにしているのでは?」
ジュリアが家を出てからは使用人となったベルベットが家事をやっている。
だが、何もできないベルベットによって家がメチャクチャになっていた。
流石にザーガルも悲惨な状況に気がつき、ベルベットに指摘をする。
「酷い! しっかりやっているわよ」
「確かに作業はしているようだ、だが、俺の服がシワクチャだし、臭くなっている……。庭の花壇は枯れはじめているぞ。更にこの米、カリカリしていて硬いのだが……」
「だって……」
泣き出してしまうベルベット。
ザーガルはこれ以上何も言えずに頭を撫でるしかできなかった。
「ちょっと私の調子が悪いだけなのに……!」
「そうなのか、すまなかった。くそう、ジュリアのやつ……いつになったら帰ってくるのだ! そもそもあいつが長期間家を留守にするからベルベットに負担がかかってしまうというのに。そろそろ帰ってきてくれないとドッキリ企画の冗談では済まなくなってしまうぞ……」
「まだ戻ってくると思っているの?」
ベルベットは手で涙を拭きながら信じられない表情をしていた。
「当たり前だろう。きっと実家で大事な仕事を抱えてしまっているのだろ? それにようやくわかったのだ。私たちに嫌がらせのように店の出禁ばかりさせてくるのもなんとなく理解できたのだよ」
「はぁ!?」
「きっとあいつはベルベットに全てを任せて信じられると確信している。だからこそ、留守中の間は私が外に出て危険な目に遭わぬようにと、心配してくれているのだよ」
「はぁぁ!?」
ザーガルは自信満々の表情だ。
更に、顔を赤らめながら呟く。
「それに……ジュリアは私のことを相当溺愛してくれているからな……」
「なんでそうなるの……?」
「考えてもみろよ。家を出る際に置き手紙をしてくれていた。緊急だったらそんな面倒なことせんでも使いの者から手紙でも出せば済むはずだ。つまり、緊急事態でも私のことを気にかけてくれている。そして、気がついたんだがジュリアの父が経営している店からの出入り禁止令が多い。つまり、ジュリアは私に対して店ぐるみで何かしらのサプライズをしてくれようとしているのだろう。王都を巻き込んでまで……。ネタバレしたらつまらんからな。ベルベットも聞かなかったことにして一緒にサプライズを受けよう」
「絶対に違うと思う……」
「ともかく、今は過酷な状態だが、いずれ見合った幸福が待っているのだよ。だからこそ私は我慢し続けられるのだ。ベルベットも大変かと思うがもうしばらく辛抱してほしい」
「だったらせめてザーガルも家事手伝ってほしいんだけど!」
ベルベット一人では家中の家事をすることなど到底できるものではないのだ。
「使用人として雇っているのだが……」
「限度があるわよ! もう限界なの!」
「わ……わかった。何をすればいいのだ?」
ザーガルの発言を聞いていて、ベルベットも苛立ちを隠せないでいた。
ベルベットの圧力に負けてしまい、従うしかできなかったのである。
ザーガルは大きなため息をはきながら、渋々家事をやるためにソファーから立ち上がった。
「じゃあ、全自動洗濯魔導機の近くにアレが出たの。退治してほしい。あれのせいで洗濯が怖くてできないから!」
「まさか!!」
「そう、ゴッキー。しかも前見たときパタパタ飛んでいたわ……」
「なんだって!? 王都で最も恐れられている黒い刺客が!? しかし、今まで我が家では一度も出たことがなかったのだぞ!」
今まではジュリアの徹底した掃除と清潔さが保たれて、更に対策もされていたために出現するようなことはなかったのである。
しかしジュリアがいなくなり、ゴミは散らかしっぱなしの上、掃除もできていなかったために出現するようになった。
ベルベットに誘導されザーガルは恐る恐る洗面所へ付いていった。
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