悪事だらけでどうしようもできない
ザーガルと離れてから随分と時が過ぎた。
いまだに離婚をしたい意思は変わらない。
時間が経てば落ち着くかとも思ったが、周りからの報告や情報を聞けば聞くほど、離婚したい気持ちがどんどん強くなっていく……。
「ジュリアよ、大丈夫か?」
「お父様。一生の不覚だと思うようになってしまいました。なんでザーガルの性格を見抜けなかったのかと思うと……」
「無理もない。ジュリアが落ち込むことではないぞ。それにザーガルが変わったのはジュリアと正式に婚約をしてからだと聞いている」
ザーガルと出会った頃は何も問題がない相手だと思っていた。
それまでのザーガルやポルカ家の評判も聞いていたし、私にとっても良い婚約だと思っていたくらいである。
だが、婚約が正式に決まりザーガルはすぐに仕事を辞めてしまったのだ。
結婚するまで慌ただしくなるし、私に合わせて新たな職を探すのかとも考えていた。
結果はそのまま何もしないダメな男になってしまったのである。
「ザーガルだけでなく、ポルカ家の者達の評判も悪い。やはりエイプリル家の資産が目当てだったのか……」
「ならば私が離婚をしてしまったら、余計にザーガルの思う壺になってしまうのでは……!?」
結婚してからの資産もかなり溜まってきている。
この状態で離婚してしまえば、何か余程の過失がない限りは資産もザーガルと折半になってしまうだろう。
かと言ってこのまま仕事をしないわけにもいかないのだ。
「その点は問題ない。ジュリアが時間を与えてくれたおかげで、諜報部員からの情報で色々と悪事があからさまになってきているのだ」
「そんなに色々と!?」
「正直俺も驚いている。どうやったらここまで心情が変わるのか聞きたいほどだな」
それは私も聞きたい。
婚約前のザーガルに戻ってくれることを期待はしていないが……。
「これは悪事ではないんだが、ザーガルが賭博場に頻繁に出入りしていることは知っていたか?」
「はい!? 賭博ってギャンブル!? まさかガージーノルレットへ?」
「やはり知らないのか。調査したところ、ここ数ヶ月は頻繁に出入りしているようだ。これはアルトからの情報だが」
もはや言葉が出てこない。
別に趣味をどうこう言うつもりはないが、私はザーガルにお金を貸している側なのだ。
もしも今もなお、貸したお金で行っているとすれば許せることではない。
いや、待てよ……。
嫌な予感が頭の中でぐるぐると回っている。
「家出の少し前なんですけど、ザーガルが毎日のように出かけてどこかで仕事をしていると言ってた気が……。まさか、まさか……仕事って」
「たまにいるんだよな。稼げてもいないのにギャンブラーと名乗る奴が」
「稀に生計立てられる人もいますけどね」
私だって特殊な仕事をしているので、しっかりと稼いでいるのならギャンブラーでも構わないと思っている。
だが、ザーガルは私からお金を借りてまでやっているのだ。
もしもこれでしっかりと稼げずにお金を使い果たしたとしたら、絶対にザーガルを許せないだろう。
「さて、想定以上にコトが進んでいる。王都は固めたが、あとはジュリアの有り難みがそろそろ分かってくる頃だろう」
「ありがたみ?」
「そうだ。家ではジュリアが全ての家事をやっていたのだろう? 現状ザーガルは何もしとらんらしいし、ベルベットも家事などできるわけがない。そろそろ強制的にやらねばならん頃だ。ジュリアの存在を分からせてから離婚へ持っていこうと考えているのだ」
お父様はこういうことになると性格が悪い。
どうせ離婚するのだから、ザーガルが後悔してもしなくてもどっちでも良い。
私自身が言うのも変なことだが、有り難みを感じてから離婚へ持っていき、泣き寝入りしてももう遅い展開をあえて作るというのは残酷なものだ。
だが……。
「果たしてザーガルが有難みに気がつくかどうか怪しいですけどね……」
「もしもこれで気づかないようならば救いようのない大馬鹿者だろう。その時は更に別の方法も考えている」
「どんな?」
「それはもしもの場合は裁判のときに分かることだ」
お父様は普段はなんでも喋ってくれるが、今回はそれ以上口にしなかった。
一体何を考えているのだろう。
もしもザーガルが後悔するようなことがあって、裁判でその状況にならなかった場合は後で聞けば良いか。
「ところで、変なことを聞いてしまうが、仕事も関係するので一応今の気持ちでいいのですまないが聞かせてもらいたい」
「なんでしょうか?」
「離婚した後、誰かと再び結婚したいと思えるような相手は現段階でいるか?」
「いえ、もう結婚は懲り懲りですね」
意外と即答だった。
気持ちは変わるものとはよく言うが、今の私は新たに恋愛に進展させることも難しいと思ってしまう。
百歩くらい譲ってアルト義兄様のような人が現れたらまた違うのかもしれないが。
あれ、そう考えてたら脳内でアルト義兄様の顔が沢山出てきてしまった。
あぁ、折角だから義兄様の好きなクッキーでも焼こうかな。




