【視点】入店禁止だらけ(後編)
「ベルベットよ、今にも崩れそうな民家が店なのか!?」
「庶民の店ってこういうものなの。とにかく食べましょう! 確かオムライスは千紙幣だったはずだし!」
「ふん、今日の負け分がなければ二百杯食べられたものを……」
ザーガルはブツブツと文句を言いながらも店に入る。
「らっしゃい! おや……!?」
「なんだ庶民の店主? 私の顔をじろじろと……」
「ほう、間違いなさそうだ。ザーガルさんで間違いないね!?」
店の雰囲気もザーガルにとっては馴染みのない古風とした感じでなじめていない。
だが、庶民の店主に名前を何故か覚えられていてザーガルは少し機嫌が良くなる。
「ほう! 私の名前を知っているのか。こんな場所には来たこともないのに、そんなに私は有名なのか」
「そりゃあね……」
店主は良い顔をしていなく、むしろ困惑している様だった。
構わずザーガルはすぐに注文をしようとしたところである。
「すまんがあんたらを店に入れるわけにはいかないんだ。そういう指示があってねぇ」
「なんだと!? こんな庶民の店もダメなのか!」
「いやあ、ウチとしては客は客だし良いんだけど、入店させるならもう一つ条件を出すように言われててね」
店主は言いずらそうな雰囲気を出しているが、ザーガルは無理やりにでもはかせようとしていた。
「食えるならかまわん! 条件を聞く!」
「そうか? 敷地内の入場料一萬紙幣ずつ別途でいただくが……」
「高すぎる!!」
あまりにも理不尽な請求を聞いてザーガルも発狂していた。
しかし、ベルベットはあまりの空腹具合に気にもしない様子だったのだ。
「もう良いから! それくらい払うから食べさせて……」
「おい、支払いは私だぞ?」
「でもこのままじゃ飢え死にするわよ?」
「むう……仕方がない。その代わり、不味い料理を出してきたら許さんぞ!」
店主が苦笑いしながら我慢してザーガルの言い分を聞いていた。
「店主、水とオムライスというのをそれぞれ二つ頼む」
「はいよ」
とにかく早く食べたい思いで、先に二人分の二萬紙幣を渡した。
しばらく待ちながら、ザーガルはテーブルに指をトントンと鳴らして待つ。
「もう少し静かにしてほしいんだけど」
「ベルベットには私の苛立ちを理解できないのか? なんでオムライス如きでこんなに待たされるのだ!? 庶民のクロワッサンを買ったときはすぐだったぞ」
「そりゃ今作っているからね……」
ベルベットすらも呆れてしまうほどザーガルはイライラしている。
入場料を払わされた上、ここまで賭博で負けたことと、ベルベットまでもが一緒に負けてしまったことが悔しかったのである。
「お待ちど」
「ようやく来たか」
テーブルの上には卵で包まれたオムライス。
ザーガルは何度もジュリアの手料理で同じものを食べていたので、あまり喜びを感じていなかった。
「ふむ、不味くはないが美味くもない。さすが庶民といったところだろう」
「この際文句言わないの! お腹が膨れるだけマシでしょう?」
「だがジュリアのオムライスならタダだし、これよりも数十倍は美味いぞ?」
わざと店主に聞こえるような声で喋っていた。
それを聞いていた店主は文句の一つも言わずに黙って聞いているだけだったのだ。
「食った食った。味は納得できんが腹は膨れたから良しとしておくか」
「毎度。代金は一人千紙幣だ」
「……入場料の十分の一というのも嫌なもんだな」
最後まで文句を言いながら店を出た。
「入場料は明らかに私へ向けての嫌がらせだ。きっとジュリアの奴が絡んでいるのだろう。法外な金を請求して私の金が無くなったと同時に、すぐに泣き寝入りして謝らせようとしているに違いない。ジュリアが勝手に家出をしたというのに何故私がこのような被害を受けなければならんのだ……」
「まぁ!! なんて酷い人!!」
実際にはアルトとダロンのエイプリル家が国を味方にして、命令はガイル伯爵の手によって成立したことである。
「くそう……店に入れるかと思ったら法外な金額を請求されてしまう。これではすぐに金など尽きてしまうぞ……」
ザーガルたちは既に窮地に追い込まれていたのだった。




