【視点】入店禁止だらけ(前編)
「くそう! 一体どうなっているのだこの王都は!」
「まさか半分近くの行きつけの店が出入り禁止になってしまうなんて……しかも何故か私まで」
ザーガルたちは苦悩していた。
近所の商店を中心に、しばらくの間出入りを禁止されてしまったのだ。
パン商店での事件と、ガイル伯爵の力によって入店拒否になったのである。
「ジュリアさえ帰ってくれば、あいつの顔を使えれば万事解決するというのに……」
「ねぇザーガル、ジュリアさんとはいい加減に離れて私と一緒になりましょうよ!」
誘惑するようにザーガルの腕にベルベットは胸を擦り付けながら魅了している。
ザーガルも満更ではない態度を見せながらも首を横に振った。
「何度も言っているだろう。ジュリアのことは愛している。たとえベルベットと関係を築こうとも離婚する気はないのだよ」
「もう……これでも!?」
「わ、何をする!」
ベルベットの誘惑は続き、ザーガルも堪能した後に再び答えた。
「ふぅ。ベルベットのことも愛しているかもしれんと考えるようになった。だが、やはりジュリアのことを愛している」
「そんなご都合主義は流石に世間は認めてくれないわよ?」
「いや、たとえこの先ベルベットのことを愛したとしても、ジュリアとは離婚が出来ない。それだけあいつの財産や親の権限が凄まじいのだからな……」
ザーガルがどうしてもジュリアのことを諦められない理由が他にもあったのである。
ジュリアの資産に魅力があるのだ。
だからこそ、何があってもジュリアのことを愛し続けると決めていたのであった。
「でもこのままじゃ私たちの生活も危険よ? どこで食料を買えばいいの?」
「まだいくつか出入りできる店はあるだろう。それに私たちの要でもあるガージーノルレットは出入り自由だ。あそこさえあれば問題ない」
「換金せずに景品と交換していれば食料も手に入るし、生活はできるものね」
「そういうことだ。ともかく、私もそろそろ稼がねばなるまい。今回は一緒に行くか?」
ザーガルの気分は最高潮になりながらベルベットを誘った。
「あら。私は現状一文無しよ」
「問題ない。私に賭博を教えてくれたベルベットならば簡単に稼げるだろう? いくらでも貸そう。ジュリアから既に借りているから問題はない」
「それは……もちろん! 元手があるならば、多分なんとかなるわ」
ベルベットもザーガルの誘いに乗り、二人とも勝負師の目に変わった。
出かける準備をしてすぐに賭博場へ向かう。
♢
「ご来店ありがとうございましたー」
「なんということだ……景品を手に入れるどころかボロ負けではないか……!」
「今日は調子が悪すぎたわね!」
ザーガルとベルベットはイライラしながら店を出た。
持ってきた紙幣も半分以上使ってしまい、多額の出費と引き換えに手に入れたのは参加賞の飴玉のみである。
「まさかこれが私たちの夕飯になるとは……」
「ザーガルがあの時に辞めていれば勝っていたのに!」
「なんだと!? 全く当たりもしないベルベットに言われる筋合いはないが!」
「なんですって!?」
口喧嘩が始まった。
お互いに空腹状態だから尚更機嫌が悪かったのである。
「くそう……このままではジュリアから融資を得た金まで無くなってしまうぞ!? かと言って使える店が限られている……」
「もうお腹空きすぎて死にそう! この際一般庶民の底辺の店でもいいからそこで何か食べましょうよ!」
「まさかこの私に庶民の店で食事をしろと……!?」
「空腹で死ぬよりはマシでしょ!?」
喧嘩の原因が空腹であることもザーガルは分かっていたので、反論が出来ずにいた。
「分かった……。だがどこへ行けばいい? 何か庶民の店で知っている場所はあるのか?」
「もちろんよ! 私が前に何度か行ったことがある店へ行きましょ! オムライスがまぁまぁ美味しい店よ」
「ほう。庶民のくせに生意気な店だな。だが食ってやろうではないか」
ザーガルも空腹に耐えきれず、それ以上は文句も言うことはなかった。
ベルベットの案内について行きたどり着いた店は……。




