フィオルド陛下との会話
エイプリル家は、王宮まで歩いていける場所に建っている。
今回は陛下主催のパーティーということで、建前上王宮からのお迎えの馬車で移動することになった。
「ジュリア、足元に気を付けろよ」
「ありがとうございます、義兄様」
馬車に乗り込む際、アルト義兄様が手を貸してくれた。
昔から私のことをエスコートしてくれて、その上優しい。
『義兄様のお嫁さんになりたい』と本気で思っていたこともあったっけ。
あっという間に王宮へ到着して再び義兄様のエスコートで馬車を降りる。
私も王宮へ来ることは仕事柄度々あったが、未だに緊張していた。
ましてや今回は国王陛下主催のパーティーだというのだから緊張しかない。
「どうしたジュリア。歩き方が不自然だぞ」
「すみません、緊張していまして」
「そうか。ならば手を貸すのだ」
「え? ちょっと義兄様?」
私の手を繋いでくれ、そのまま王宮内へ歩いていく。
私は既婚者であるが義兄妹だからギリギリ許される範囲か。
少しばかりドキッとしてしまったのは黙っておこう。
「ダロン殿、アルト殿、それからジュリア嬢よ。よく来てくれた」
「フィオルド陛下、エイプリル家への招待感謝します」
普通に考えればここで陛下に跪くのだろうが、お父様も義兄様もそれをしない。
握手を交わすだけで、私も流れで握手だけすることになってしまう。
緊張しながらもしっかりと挨拶する。
「ご、ご無沙汰してますフィオルド陛下」
「はっはっは。そう緊張することもあるまい」
いや、それは無理だろう。
お父様や義兄様は毎日と言ってもいいくらいお会いしているようだが、私はそうではない。
それに陛下に対して尊敬もしている。
「私など民間人に過ぎません。このような会にお呼ばれされただけでも誠に光栄なことで……」
「ジュリア嬢が納めている納税額は国のトップクラスである。今となっては国一番のダロン殿に近いほどの額だ。国としては大変感謝しておるから、招待するのは当然だろう」
「左様ですか……」
あまり自覚はないが、どうやらそういうことらしい。
「それにもう一つ……」
陛下が人差し指を一本立てながらボソッと呟く。
「ジュリア嬢のケーキが評判だと聞いていてな。是非私も食べてみたい」
「ほら、だから言っただろう!」
義兄様が陛下につられて得意気に言ってくる。
陛下や周りの護衛に対して妹自慢をしているように見える。
しかし、私自身にあまり実感がなかった。
「そこまで美味しくできるか自信はありませんが、陛下がお望みでしたら是非今度作らせていただきます。陛下に召し上がっていただけるとは光栄です」
「うむ、ありがたい。楽しみにしておる。それでは今日はパーティーを楽しんでいってくれたまえ」
そう言って陛下は奥のパーティー会場へと一足先に向かっていった。
「私、ユメでも見ているのでしょうか」
「現実に決まっているだろう。ジュリアの仕事への実績が評価され、更に料理に対しても評判がいいということだ」
「ジュリのケーキがたとえ陛下といえど食べさせてしまうのは少々妬くがな!」
義兄様はなぜかムスッとした態度をとっていたが、私にはなぜなのかはよくわからなかった。




