焦げたとしても
「ジュリアに聞くのも悪いんだが、ザーガルもベルベットという女もバカなのか?」
「私の口からはちょっと……」
お菓子作りをしている最中、急にアルト義兄様がひょっこりと現れていきなり聞かれた。
ふと顔を見ると、相変わらずのイケメン顔ではあるが、呆れたような表情をしている。
ザーガルのことを悪く言いたくはないが、あれでも私の旦那である。
しかしながら、恥ずかしい上に情けなくなってしまうので、これ以上のことは言えなかった。
「早速コンタクトを取ってきたぞ」
「え? 一体何をしたのですか?」
驚いてしまいお菓子作りの作業を止める。
アルト義兄様の笑みが今はこわい。
「ジュリア宛で宅配してきた。あくまでジュリアへの届け物だ。まさか他の者が開けるわけないだろ?」
「いえ、ザーガルは私への届け物も平気で開けていた人なので……開けるでしょうね。何を送ったのですか?」
「見た目はお菓子とジュースだ。多少中身を細工したがな」
「何か良からぬ物を混入したのですか!?」
義兄様たちは私のために制裁を加えると張り切ってはいるが、いくらなんでも命に関わることを直接するのはどうかと思う。
止めるべきかもしれないと考えていたのだが……。
「なぁに、そもそも家族間とはいえ勝手に開封するのはご法度だろう。俺はあくまでジュリア宛に配達したのだからな。それに入れたものは強力な下剤だ。しかも身体中のバイキンを一緒に流してくれるおまけ付きのやつだし飲んでも食べても毒ではない」
「でもそれって確か……」
「あぁ、三日間はトイレに引きこもるだろうな。そのあとは快調になる保障付きだが」
義兄様の入れたという下剤は本来は便秘だったり身体に毒を負った者が飲む薬のようなものだ。
どうしようもなくなった時に、飲むことでしばらく大変なことになるがその後は見違えるほど回復するというやつだろう。
ザーガルたちは毒も負っていないだろうし、飲んだらただただ苦しむことになる。
「恐ろしいことをしますね。ただの嫌がらせでは?」
「いや、これも今後離婚裁判するときの決定的証拠になるからやるべきことなのだよ。半分は俺の好奇心だが」
「悪趣味ですよ」
「勘違いするな。悪戯をするのが趣味ではない。ジュリアへこれだけ酷いことをしてきた者達をただの離婚裁判で決着つけさせたくないだけだ。義父上がすでにあの家に監視をつけているのだろう? ならば俺は数々の悪事を証拠として残し、裁判をより優位にしようと考えているだけだ。……表向きには」
最後の一言だけは笑っていた。
国でも有名な資産家であるお父様と、国中至る所に人脈があるアルト義兄様がタッグを組んでしまった以上、私にはどうすることもできない。
離婚するにしても、証拠が必要だし、今のままでは財産分与で厄介なことになるのは間違いない。
きっとその辺も考慮して色々と調査してくれているのだろう。
「ところで焦げ臭い気がするんだが」
「は!!」
やらかした。
あまりにも義兄様の会話に意識を集中していたので、お菓子作りをしていることを忘れてしまったのだ。
急いで火力を消すが手遅れだった。
「ジュリア、それは俺が食べるから処分はするなよ?」
「え? でも……」
「せっかくジュリアが一生懸命作ってくれたものを捨てるなどあり得ない。俺は絶対に食うぞ!」
「あ……」
少し焦げてしまった熱々のケーキを奪われ、そのまま食べ始めてしまった。
「ジュリアの作るお菓子は世界一だ。たとえ少々焦げていてもだ」
ここまで褒められてしまうと、少々恥ずかしいものである。
顔を赤らめてしまいモジモジとしてしまった。




