離婚へ向けての会議
「本題に戻す。ザーガル君との離婚推奨の件だが、ジュリアはどう思うのだ?」
お父様の真剣な問いに対して、私は躊躇する必要はもはやない。
今まで起きたことを全て話すことにした。
「限界です……。ザーガルは幼馴染のベルベットさんに夢中ですし、生活もメチャクチャです。お父様からそのようなことを言ってくれるとは思いませんでした」
頭を下げてひたすら謝る。
今まで出さなかった弱音を初めて吐いてしまった。
申し訳なさでいっぱいなのだ。
「顔を上げてくれ」
「え……?」
お父様は私の肩にそっと手を乗せる。
今にも涙をこぼしそうなところにお父様の優しい手が加わり、これ以上は我慢ができそうになかった。
「むしろジュリアに対してすまないと思っている。本当はお見合いは経験だけさせるつもりだった。今まで男っ気が全くなかったもんな」
「異性に興味ありませんでしたからね」
我が家は貴族家ではないので、恋愛も好きにさせてくれていた。
だが、寄ってくる男は皆財産目当てであったために、徐々に私は異性との距離を空けるようになってしまったのである。
「いずれジュリアが心から愛せそうな者を探し、別の人間とも機会があればお見合いをさせようかと思っていたのだ。だが、ジュリアは思ったよりもザーガル君を当時は気に入っていたようでな」
「彼の本心に気づけなかった私がいけないのです」
こればかりはどうしようもできない。
お父様も、彼の本当の性格は知らなかったのだ。
わざわざダメそうな人間をお見合いさせるような酷い親ではないことを、私は知っている。
「ジュリアが気に入った相手と結ばれればそれで良いと思っていたからポルカの息子で良いかと思ったが……本当にすまなかった」
今度はお父様が頭を下げてきた。
お父様は仕事熱心でプライドが人一倍高いことで有名だ。
そんな父が他のものに頭を下げることは滅多にない。
自分のミスでない限りは決してこのようなことはしなかったはずなのに……。
「頭を上げてください。私こそ申し訳ありませんでした。婚約の直後からザーガルに抱いていた違和感をすぐに相談しておくべきでした」
どうやらお父様も、ザーガルのことを最初は好印象で見ていたが、婚約した頃から良くは思っていなかったらしい。
お父様がゆっくりと頭を上げ、再び私の肩に手をあてた。
「結論を先に言おう。しばらくジュリアはここにいなさい。ザーガル君たちには愛する娘を傷つけた点と不倫の罰をたっぷりと与える」
「義父上、ずるいです! 俺も参加しますから!」
「ひゃ! びっくりした! 義兄様、脅かさないでくださいよ」
突然後方から大きな声で叫びながら駆けてきたので驚いてしまった。




