File090 〜嗚呼、子ども達への背徳感!〜 1
「見た? あの時の魔女の顔」
「今までで一番マヌケだったよ」
「先生も酷いよね。魔女にできるボランティアなんてあると思ってるのかな」
「薬の調合とか?」
「魔法の石拾い?」
「動物とお喋りするとか!」
きゃはは、と耳に残る笑い声を廊下に響かせる少女たちの集団の最も外れで、ポージー・モフェット(Posie Moffett)は肩を竦めていた。
授業が終わると、生徒たちは次のクラスへ移動を始める。ポージーは自分のロッカーで教科書を用意していた。
「ポージーもさ、見た?」
隣はアーリンのロッカーだ。彼女は腹を抱えて笑っている。
「あの魔女の醜態! 先生も酷いよねえ、魔女の奉仕活動ってさ何? 薬作り? キノコ狩り? 黒魔術?」
彼女の笑い声が廊下に響く。ポージーは固い笑みを浮かべて、彼女からなるべく目をそらす。
「石磨きじゃない? 陰気な子にできるような奉仕活動って」
他の女子が加勢し始めた。
「誰が喜ぶのよ、そんな活動!」
「さあ、石屋?」
「石屋って!」
ポージーは片隅で、小さく笑った。彼女たちは何かしら敵対しないと、生きていけないのだろうか、などと思いながら。
「あ」
レイシーがやって来た。艶のある長い黒髪の下には、美しい顔がある。
ポージーはひっそりと思っていた。
彼女は、学年で一番美しいのだ。魔女という言葉は、良い意味で間違っていないのだ。御伽噺に出てくるような魔女はきっと、あれだけ美人に違いないのだから。
女子たちは黙って彼女を眺めた。
レイシーは周りの視線に気づいているようだ。顔を伏せて、ロッカーに歩いていく。
すると、何の前触れもなく、彼女は前につんのめった。ポージーは思わず手を出しそうになった。
しかし、彼女がどうして転びかけているか分かって、その手をすぐ引っ込めた。女子の一人が足をかけたのだ。
レイシーは何とか体勢を整え、怯えた顔で周りを見回した。犯人を探しているようだが、全員がニヤニヤと同じ顔をしているのだ。ポージーは顔を伏せて、彼女と目を合わせないようにした。
「行こ」
アーリンがそう言って歩き出した。ポージーは少し遅れて、団体についていく。数秒後、後ろで大きな音がした。ポージーは思わず振り返った。
レイシーがロッカーの扉を開けたまま、呆然と立ち尽くしているところだった。そんな彼女の足元には、教科書の他、丸められたプリントやお菓子のゴミが散乱していた。
「汚いロッカー!!」
「あれじゃ奉仕活動なんかやってらんないよ。特に掃除のは」
甲高い笑い声の中、ポージーはレイシーを見つめていた。透明な雫が頬を伝って落ちるのを、ポージーは確かに見た。
*****
「どうしようかなあ、ケレン先生のボランティアの課題」
授業終わり、ロッカーに向かう間、ポージーはアーリンと並んで歩いていた。
「もうすぐ連休でしょ? 先生ってば、生徒のせっかくの休みを課題で潰すつもりよ。自分は休むくせして」
彼女の言葉には常に棘があった。ポージーは、彼女が持つその棘一つ一つが、まるで自分のことを言われているかのようにチクチクと刺さるのだ。
「なにか、パーッとやって、パーッと終わるようなやつ無いかなあー。できたら、家で出来るようなやつ」
アーリンは自慢のブロンド髪を指にくるくると巻きながら、すれ違う男子生徒に視線を送っていた。彼らからすれば、これほど嬉しいことはないはずだ。
ポージーは惨めだった。自分のそばかすの顔と濃い眉毛、そして赤い癖毛を、彼女は心から好きになれなかったのだ。
そして、アーリンの隣に居るとそれがますます目立つようでならないのだ。
「ボランティアなんて、形だけで良いんだよ。だって、これは課題なんだから。自主性もクソもないじゃない。ケレン先生ってば、言ってることとやっていることが矛盾してるって気が付かないのかしら」
ロッカーに着くや否や、アーリンは鞄を取り出して、鏡で前髪を整えた。
「じゃ、私サークルあるから。ポージー、何か良い案が浮かんだら私にも教えてよね」
「あっ、えっと、うん......」
ポージーが頷いた頃には、アーリンの背中は随分遠くに行っていた。彼女のブロンド髪を男子は目で追いかけ、女子はサッと避けた。
ポージーもまた、自分のロッカーに目をやった。
結局、カーストのほとんど最下位から奇跡のように彼女のグループに入れた人間には、「友達」というラベルすら貼られないのである。
ロッカーを開けると、扉の内側に羊のマグネットがくっ付いていた。ポージーは、盛り上がった羊の毛の山と谷を、丁寧に指でなぞった。ぽこぽこと楽しい感触が、彼女の心のささくれを小さくしてくれる。
これは、かつての親友に貰ったものだった。その子は一昨年、遠い街に転校してしまったのだ。別れ際にくれたのが、この羊のマグネットだった。
ポージーは自分の髪質が好きになれない。櫛で溶かそうとすれば必ず何処かで引っかかってしまうし、雨の日は収拾がつかないほど膨らんでしまう。
そんな彼女が幼稚園の頃に付けられたあだ名は「ライオン」だった。くるくるの赤毛が顔の周りを囲んでいるのだから、たしかにライオンのたてがみに見えないこともない。
小学校に上がっても、中学校に行っても、彼女は「ライオン」だった。ポージーはその度に笑って誤魔化していたが、ライオンの持つ荒々しさがちっとも好きになれなかった。
もし、これがもっと可愛らしい動物なら。
例えば「リスのしっぽ」だとか、「アルパカ」だとか、そんな可愛いあだ名が付いたら良いのに_____。
そして、高校生になってその夢は叶ったのだ。夢を叶えてくれたのは、ポージーの大の親友だった。
「羊さんみたいで、とっても可愛いじゃない!」
羊。それは、「ライオン」よりも穏やかで、「リスのしっぽ」よりも存在感があった。「アルパカ」よりも知名度があって、ちょうど良い地点に居る動物だった。
彼女がくれたのはあだ名ではない。ポージーのイメージキャラクターだった。荒々しさは消え、雲のようにふんわりとした可愛らしいものになったのだ。
分かりやすいフォルムも気に入った。いっそのこと、自分の赤毛が全部真っ白になればな、と想像するくらいだった。
親友が転校した後、ポージーは身の回りのものを羊グッズに置き換え始めた。遠くに行った親友の言葉を傍に置くとともに、周りに静かなアピールをしたのだ。ささやかな「羊宣言」だった。
そのひとつが、羊のペンケース。SNSで爆発的な人気があり、なかなか手に入らないのだが、ポージーが目をつけたのはそのブームの少し前だった。
アーリンがポージーに目をつけたのは、そこからだった。自分のはるか下のカーストに居る女子が、自分よりも良いものを持っているというのが気に入らないのである。女王の周囲に煌びやかな調度品は並ぶべきで、貧しい民がそれを持つべきではないのだ。
ポージーはそのようにして、カーストの上位に引っ張りあげられた。いじめのターゲットから外れるという点では運が良かった。
しかし、誰かを傷つける側に回るというのは、気持ちの良いものではない。
ポージーが鞄にノートを入れた時、視界の端に誰かが入ってきた。それは、いじめられっ子のレイシー・アーヴィング(Lacey Irving)だった。
ちょうどロッカーの扉が影になって、彼女の顔は見えないが、さっきの授業でもアーリンとその取り巻きによる攻撃を食らっていたのだ。
ポージーは、彼女に対して一言でも声をかけてあげたかった。謝って、彼女と友達になってみたかった。
しかし、レイシーからすれば、自分はいじめっ子の一味。話しかけたとして、レイシーはどう思うのだろう。これもまた、いじめの行為のひとつだと疑われるかもしれない。
そう思うと、ポージーの口はぎゅっと閉じられてしまうのだった。
レイシーは、黙々と帰り支度を始めているようだった。
幸い、アーリンは既にサークルへ行き、ほかの取り巻きたちも教室を出てから、ほかの場所へ行ってしまったようだ。
ロッカーには、今二人しか居ないのである。
ポージーは扉を閉めた。そして、心を決めた。
「あ、あのっ」
レイシーの目がポージーを向く。森の奥にひっそりとある湖の水面を思わせる、濡れた瞳だった。眉が隠れるところで綺麗に切りそろえられた前髪や、一本一本が羨ましいくらいのストレート。
ポージーの言葉は、彼女の黒髪に吸い取られて、枯れてしまった。
「......なに?」
レイシーは怪訝な顔をして、ポージーを見つめた。その表情の中には、友好的な要素をひとつも含んでいなかった。
「えっと」
ポージーは急いで話題を探した。そして、直前までアーリンと喋っていた話題を無理やり引きずり出したのだった。
「ケ、ケレン先生の課題......どうやって終わらせるのか聞きたくて......」
尻すぼみになって、最後の方はほとんど聞き取れなかったようだが、レイシーは「ああ」と頷いている。
「今からボランティアセンターに行くの。私、ボランティアしたことないから」
アーリンたちの冷やかしを思い出したのだろう、彼女は言いづらそうだった。
ポージーは慌てて「そっか」と相槌を打ったのだが、既に彼女は此方に背を向けて歩き始めていた。
「ま、またね」
ポージーは彼女を追いかけられなかった。彼女に向けられた、明らかに関わりたくない他人に向けるための表情が、心の中に染み付いている。
しかし、一方で彼女と話せたという事実が、顔の火照りに現れていた。
*****
次の日、ポージーが学校へ行くと、ロッカーの前でアーリンとその取り巻きたちに会った。アーリンはポージーの肩に手を置くと、「おはようっ」と明るい声で言ったのだ。
「おはよう、アーリン」
ポージーは鞄をロッカーに入れながら、彼女を振り返る。
今日はブロンズの髪をポニーテールに結っている。色とりどりのヘアピンが髪のあちこちについていて、大きなピンクのリボンが髪の結い目を飾っていた。
ピンクはアーリンのイメージカラーだった。彼女の持つものはほとんどがピンク色で、取り巻きたちは彼女のカラーに被らないように、自分の持ち物に気をつけなければならないのだ。
アーリンは、にっこりと笑っていた。
「ポージー、ケレン先生の課題、終わったよ」
「えっ?」
ポージーの目がまん丸になるのを、彼女は満足そうに眺めている。
「ど、どうやって?」
課題が出たのは昨日で、彼女は昨日、サークルのはずだった。
アーリンが所属しているのはチアサークルで、ボランティアサークルではないはずだ。
他の部活の大会が活発に行われる今時期、チアの練習は夜の遅い時間まで続くのだ。そんなサークルに入っている状態で、あの課題が終わるわけがない。
ケレン先生は、これからやって来る連休で課題を終わらせることを前提としていたはずだ。その連休まで、今日を入れてあと二日もあるのだ。
「ふふ、気になる? 実はみんなも、ほとんど同じ方法で課題を終わらせたんだよ」
「み、みんなも?」
取り巻きたちを見ると、頷いている者と、鼻で笑う者が居た。ポージーはその時ふと気がついた。なんだか、自分に向けられる視線が冷たいのだ。
「どうやって終わらせたのか知りたい?」
アーリンが笑顔でポージーの手を取る。ポージーは頷くが、彼女の顔もまた、いつもと違う気がした。
「実は、インターネットで簡単なボランティアを募集しているのを見つけたの。自分の基本情報を入れるだけで、ボランティア完了! 私は三分で終わっちゃった!」
「三分......」
「それで、連休はボランティアをしなくても良いってわけ! でね、終わった人達で、パーッと旅行でも行ってこようと思うの! サークルの先生を誘ったら、オーケーしてくれたんだ!」
アーリンは、この辺りで有名な遊園地の名前を上げた。先生が同伴して、彼女たちは小さなバカンスに行くようである。
「ポージーも行く?」
アーリンに問われて、ポージーは「えっと」と言葉を詰まらせた。
イエスと言わなければ、アーリンは良い顔をしないだろう。今まで、この返答を間違えて取り巻きから外された女子を、ポージーは何人も知っている。
「い、行こうかな_____」
「残念っ!」
アーリンが、握っていたポージーの手を勢いよく振り払った。
「ライオンちゃんは、お留守番ー!」
アーリンが自分の言葉に自分で驚いているように、大袈裟な表情を作った。
それは、目を丸くしているポージーを嘲笑っているかのような顔である。
アーリンが、自分を「ライオン」と呼んだのだ。それは、スクールカーストが上がった後、一度も使われていないポージーのあだ名だった。
「だってまだ課題終わってないんでしょ? それに、昨日さ、エマが見ちゃったんだけど_____」
ポージーは体中の細胞がぎゅっと縮こまった感覚に襲われた。
彼女は全てを理解したのだ。
「魔女と喋ったんだって? しかも、楽しそうに?」
「違うの、あれはっ」
「違うって」
アーリンが取り巻きを振り返って笑う。取り巻きたちも笑った。
エマというのは、茶髪の女子である。彼女は取り巻きたちの顔の間から、針のような視線をポージーに向けて冷ややかに笑っている。
ポージーは、自分のつま先に目を落とした。
周りには気をつけていたつもりだ。昨日、ロッカーの周囲にはレイシーと自分の他に誰も居なかった。
男子の誰かが見ていたのだろうか?
エマにはボーイフレンドの男子が居たはずだ。
「ねえ、私って優しいと思うんだけど」
アーリンが、俯くポージーの視界に入るように、少しだけ屈む。スパイシーな香水の香りが、ポージーの鼻をくすぐった。
「あなたに課題の終わらせ方を伝授したんだから。これであなたもケレン先生を満足させられるんだよ。そして、スクールカースト転落! 成績は上がって、地位は転落!」
ケラケラと笑うアーリンの声は、昨日とは全く違う音に聞こえた。
「じゃあね、ライオンちゃん」
額を軽く指で弾かれて、ポージーは目をぎゅっと閉じた。
足音が遠くなっていく。彼女達の話題は、既にバカンス向けのものになっていた。いつ切り捨てられてもおかしくない子のことなんて、もう二度と話題には上がらないのだ。
ポージーはゆっくりと目を開いた。自分の手がぶるぶる震えている。教科書やノートの上に、羊のペンケースが乗っている。
「......」
ポージーは、羊の毛を優しく撫でた。凹凸に指を走らせながら、親友の顔を思い浮かべていた。
始業のチャイムが鳴っても、彼女はのろのろと歩いた。
自分が今居るのが夢なのか現実なのか、よく分からなかった。
*****
家に戻ってからも、ポージーはぼんやりとしたままだった。羊のクッションに顔を埋めていると、気が付けば羊の毛の部分に涙のシミが出来ていた。
時計に目をやると、もう十七時になろうとしている。ポージーは、まだ帰ってきてから一度も開けていない鞄を、足で自分の近くに引き寄せた。
しかし、開く気にならなかった。何をしようにもやる気が起きないのだ。
自分は、明日からどうやって学校で過ごしていけば良いのだろう。いじめのターゲットにされてしまうのか。それとも、案外放っておいてもらえるのか。
今、アーリンたちのターゲットはレイシーだ。なら、きっと自分がターゲットになることはない。
ポージーは胸を撫で下ろしている自分に気がついて、慌てて頭を振った。
とにかく、明日は何とか理由をつけて学校を休もう。それならば、休暇明けに提出する予定の課題を仕上げてしまわねば。
ポージーは、鞄を開いてケレン先生のボランティアの課題シートを取り出した。裏は鉛筆で書かれた羊でびっしりだが、表は簡潔な課題の指示が書かれているだけだ。
ポージーはそれを読みながら、小さなため息をつくのだった。
明日休むのなら、学校のボランティアセンターには足を運べない。つまり、自分の力で、するべき活動を見つけないとならないのだ。
ポージーは自室のパソコンに電源を入れて、インターネットで近くで募集がかかっているボランティアを探してみた。
「どれも大変そう......」
課題が面倒だというアーリンの意見には、ポージーは賛成である。大事な休みを、課題で潰されるのは誰だって嫌なのだ。
ほかの先生はなるべく課題を少なくしようと努力してくれたし、ケレン先生もそれに則って、提出期限を伸ばすべきなのだ。
「落ち葉拾い、ゴミ拾い、イベントの準備と後片付け......」
ポージーは頬杖をつきながら、スクリーンを流れていく面白味の無い文字たちを上に流して行った。
そして、ふとアーリンの言葉を思い出したのだった。
_____実は、インターネットで簡単なボランティアを募集しているのを見つけたの。自分の基本情報を入れるだけで、ボランティア完了! 私は三分で終わっちゃった!
ポージーは、検索バーにアーリンの言葉から連想される単語を次々放り込んでみた。しかし、それらしいサイトはなかなか引っかからなかった。
ポージーは思いきって、ページを「閲覧数が少ない順」に変えてみた。画面が切り替わって、さっきは浮上しなかったマイナーなサイトたちが順々に表示され始める。
最も上に出てきたものをクリックした。何だか怪しい警告のメッセージが出てきたので、慌ててサイトを閉じた。そうか、危ないサイトの可能性もあるのか、と少しページを進めてみる。
次に開いたサイトには、変なメッセージは出てこなかった。何やら、名前と生年月日、血液型と住所を書き込むだけで済むボランティアだという。
あっ、とポージーの口から声が出た。アーリンが言っていたのは、これに違いない。
「本当にこれだけ?」
これなら三分どころか、一分で終わる。
むしろ課題に書く文字数に困りそうだ。
だが、他にこんなに楽なボランティアがあるだろうか。
ポージーはもう少し詳しい情報を求めて、サイトの下の方を見てみた。少しスクロールするだけで、サイトは終わった。一番下には次のように書いていた。
『書き込んだ情報で、世界の誰かが助かります! どうかあなたの力を貸してください!』
世界の誰か、というのは、きっと幅広い層を指しているのだろう。献血と同じということだ。なるほど、ならばこれも立派なボランティアだ。
ポージーは早速、空欄に自分の情報を打ち込んだ。
「あれ?」
違和感は、生年月日を打ち込む時にあった。
カーソルを合わせただけで西暦が出てくるので、そこから自分の生まれ年を選択する形式になっている。
不思議なのは、その選択肢があまりに少ないことだった。
ポージーが生まれた年は、選択肢に入っていた。しかし、そこから数年前の選択肢は無い。19歳までの生年月日しかないのである。下に行けば0歳まであるというのに。
「0歳から19歳までしか、できないボランティアなのかな」
ポージーは怪訝に思いながらも、全ての情報を打ち込んだ。そして、最後に出てきた決定ボタンを押した。
『登録完了。ありがとうございました。あなたの協力に感謝致します。』
そんな言葉が現れると、突然パソコンが強制的にシャットダウンさせられた。ポージーはぎょっとして椅子から立ち上がりかける。
自分の情報が何に使われるのか、全く知らない。本当は危ないサイトだったらどうしよう。
不安が頭を巡ったが、ボランティアと調べて出てきたサイトだ。ボランティアをする人間に悪い者は居ないはず。誰もが、誰かのために考えて行うのだから。素晴らしい活動だと、先生も言っていたではないか。
ポージーは電源ボタンを押してパソコンを起動した。問題なく付いたので、ほっと胸を撫で下ろす。変なウイルスにもかかっていないようだ。
気を紛らわせようと動画サイトを開いた。好きな投稿者の動画が、そろそろ上がる頃だ。
夕飯の声がかかる頃には、彼女の頭から不安の種はすっかり無くなっていた。




