54「友也再びです」③
魔王の言葉が響き、サムだけではなく、リーゼをはじめとするこの場にいる誰もが言葉を失った。
しばらく静寂が支配するも、いち早く理解したのかギュン子が顎に手を当てて頷く。
「――なるほど、そういうことか」
「ご理解いただけたのでしたら幸いです」
「つまり、君はサムを魔王にすることで、人間以上の寿命を得た彼とイチャイチャラブラブチュッチュしたいということだね!」
「――違います! いえ、あのですね、本当に真面目な話をしませんか? こっちは本気でサムのことを案じた上で、いろいろ考えた結果の結論なんですけど!」
やはりなにも理解していなかったギュン子に、ペースを狂わせられてばかりの友也が声を大にする。
サムたちは、無理もないと友也に同情した。
いくら魔王だろうと、この変態を操ることはできないのだ。そんなことができるとしたら、彼の愛妻クリーだけだろう。
「何を言うのかな? 僕はいつだって大真面目だ! 君がサムのことを考えている百倍以上、僕はサムのことを考えている! はぁはぁっ、ちょっと考えただけでもムラムラする!」
こんな時でも変わらぬ変態であるギュン子の言動に、サムたちも落ち着きを取り戻しつつあった。
対して、友也の声は弱々しくなっていく。
「……駄目だ。宇宙人か何かと会話している気分です。まるで噛み合わないというか、未知なる生物ですよね、この人。情報としては知っていたはずだったんですが、これほどとは……恐るべき変態ですね」
ついに魔王遠藤友也にまで変態と呼ばれたギュン子。
サムたちにしたら、なにを今更であるが、あくまでも調べた情報でしかギュン子を知らない友也にとって声だけでも実際に接してみると、相当驚いたのだろう。
「――わたくしたちもお話に参加させていただきます!」
すると、背後から聞き覚えのある声が聞こえ、振り返ると、ステラを先頭にサムの奥さんたちが寝巻き姿で立っていた。
「ステラ、アリシア、花蓮、水樹、フラン……そりゃ、ここまで騒げば気づくよね」
「もちろんですわ、サム様。お父様たちには、万が一のことがないよう寝室で控えていただいております」
アリシアの説明を受けて、内心ほっとした。
ジョナサンにはいつも迷惑をかけてばかりだし、今回のことも説明しなければならない。
だが、ここで新たな魔王と邂逅させると、最近胃薬が増えてきた義父の胃にさらなるダメージを与えてしまう可能性がある。
「ようやく真面目に話ができる人たちが現れてくれたみたいでほっとしました」
「声だけが聞こえる――魔術ね。話に聞いていた、魔王遠藤友也様かしら」
「フランチェスカ・シャイト殿、その通りです。僕は、遠藤友也。そこにいる女神だか邪竜だかよくわからない存在に変わり果てた魔王エヴァンジェリンと同じ魔王をしています」
「お前の自己紹介に私を巻き込むなよ!」
「――お初にお目にかかります。聞けば、転移も自由自在だとか。一度、父が会ってみたいと言っていました」
「元スカイ王国最強の魔法使いであり、あのウルリーケ・シャイト・ウォーカーを育てた人物デライト・シナトラ殿とならぜひ僕もお会いしたいです」
「父も喜びます」
最近、サムと結婚したフランのことも、その父デライトのことも、当たり前のように友也は知っていた。
「そして、ステラ・アイル・スカイ・シャイト殿、花蓮・シャイト殿、アリシア・シャイト殿、お初にお目にかかります。水樹殿は、声だけですが、夜の国以来ですね」
ステラたちは、目に見えない魔王の声がする方向に向かって礼をした。
「さて、これで一通りサムの関係者が揃いましたね。なので、もう一度言いましょう。−−僕は君を魔王にします」
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