34「住まいのあれこれです」②
「正直なところ、ウォーカー伯爵家は観光地としても有名でして……」
「んんん?」
オフェーリアの言葉の意味が全く理解できなかった。
「あ、サム様はご存知ありませんでしたか?」
「ご存知ありませんねぇ!」
「ここ一年で色々なことが起きる中心にウォーカー伯爵家がある、というのは周知の事実です。――サム様がご滞在しておりますので、仕方がなりませんね」
「オフェーリア様に同感です。私がこの国に来てから日は浅いですが、話題の中心は常にサム様が何かしら関わっていることが多いですね」
ジェーンが頷き、オフェーリアに同意する。
そんな馬鹿な、とサムは震えた。
「いや、あのね、現実的に考えて伯爵家を観光地って、観光客くるの?」
「来ますわ」
「来ますね」
「来るとも」
「そんな馬鹿なことが!?」
ギュンターまでが真顔で「来る」というのは緊急事態ではないかと思う。
先ほどまでとは違う、真面目な顔をしているのが無駄に怖い。
「待って待って待って、どういうこと、ちゃんと説明して!?」
「……では、わたくしが」
手を挙げてくれたのは、オフェーリアだった。
「少々、乙女には言いづらいこともございますが、サム様のために頑張らせていただきます」
「そ、そんな覚悟が必要なことなんだ……お願いします」
「まず、このウォーカー伯爵家は、破壊神と名高いウルリーケ様を輩出した家です」
「そうね」
「次に、その名を知らなければスカイ王国民ではないと言われるほど有名な、ギュンター様が通っている家でもあります」
「……そんなこと言われていたんだ」
「ここまでならば、少々愉快な伯爵家でしたのですが、サム様がにょっきり生えてきました。すると、どうでしょう! リーゼ様とアリシア様の姉妹丼!」
「オフェーリアが姉妹丼とか言い出しちゃった!」
「ステラ様、フラン様、花蓮様、水樹様とご結婚し、あの世代の問題児たちを全員娶るのかと貴族たちがざわざわしました。エリカ様だけご結婚にならなかったので、年上趣味、逆に生々しいとすごく王都の人々がざわざわしました」
「そんなこと思われていたの!?」
「ええ、当時はわたくしも思っていました」
「――馬鹿な」
「そんなサム様の本命が実はギュンター様であると噂が流れ、なるほどと皆が納得しました」
「するなよ!」
「そんなサム様がどんどん有名になっていくにつれ、魔王レプシー様の存在が明らかになり、陛下がはっちゃけだし、魔族と交流が始まりました。そして、魔王様方が現れ、滞在し、今もお暮らしになっているのはどこでしょうか」
「ここ、ウォーカー伯爵家です」
「さらに言えば、夜の魔王と名高いサム様が、リーゼお姉様たちとにゃんやんしているのも有名ですし、まあ、そのお盛んですね、と。ギュンター様もクリー様にウォーカー伯爵家でお仕置きを受けることも珍しくありません。ジョナサン様とグレイス様もお子様が産まれますし、子宝祈願の観光地として有名になりました」
「いや、あの、なんていうか」
「さらに言えば、時々出現するラッキースケベおじさんに遭遇すると少々卑猥なことをされるも良いことが起きる、などという噂も流れ、若者が運試し、または肝試しとして屋敷を一周するということもございます」
「だからさ」
「ご老人たちにも一種のパワースポットとして有名であり、ご長寿祈願として」
「だからね!」
「スカイ王国王家としても、ウォーカー伯爵家は貴重文化財として現状維持をしながら後世に残すべきだというお話も出ています」
「だからぁ!」
サムは大きく息を吸って、全力で叫んだ。
「そうはならんだろぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
サムくんは、たまに「あ、サム様だ! うわ、すご! ラッキー! 握手してください!」と言われ、ご老人に拝まれたりしていることがありましたが「有名人になっちゃったなぁ」くらいにしか考えていませんでした。
観光地の話も少し聞いていたのですが、冗談くらいにしか思っていなかったので、オフェーリアさんが言ってガチであることに戦慄しております。
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