32「見上げたらぎゅんぎゅんがいました」②
「…………じゃあ、お掃除頑張って」
「ちょちょちょちょ、ちょっとお待ちよ僕のサムよ」
「お前のじゃないし」
「ふっ、照れ屋さんめ。僕に子供が生まれたからと言って、サムへの愛が減ることはないよ」
「誰が、いつ、そんなことを気にしたの」
「君の心はいつだって丸見えさ!」
「ちょっと待っててね、ローガン様を呼んでくるから」
「サムっ!? やめておくれ、僕が長年集めに集め続けた宝が!」
天井から必死に手を伸ばすギュンターを、オフェーリアはゴミでも見るような眼を向けた。
「……その、お聞きしたいのですが、生まれてきたご子息にその歪んだ性癖が申し訳ないと思わないのでしょうか?」
「甘いね、オフェーリアくん。君も、ジェーンくんも、覚えておきたまえ。それはそれ、これはこれ!」
「めちゃくちゃですわ!」
「言っておくけどね、僕のウルリーケコレクションは後世に残るべき記録と言っても過言ではないのさ!」
天井から真面目な顔をして、ギュンターは声を張り上げた。
「歴史に残る魔法使いであるウルリーケ・ウォーカー・ファレルの軌跡――僕のコレクション、記録は偉大な魔法使いと呼ばれるであろうウルの貴重な存在なのだよ!」
「ちなみに、コレクションと記憶とはどのようなものですか?」
「ふふふ、この知りたがり屋さんめ! でもいいだろう! 語ってあげようじゃないか! まず、衣類だ」
「サム様! やっぱりギュンター・イグナーツ様は度し難い変態ですわ! まず、で衣類のコレクションはおかしいですわ!」
「うん、知ってる。すごく知ってるー」
軽いジャブで、衣類のコレクションをしていると堂々と言ったのはさすがだ。
サムは出会った時から知っているが、オフェーリアは噂で聞いた程度だったのか、衝撃を受けている。
「無論、下着類もね! むしろ、下着類の方が多いと断言しておこうじゃないか!」
「変態ですわ! このような輩を退治するのが宮廷魔法使いですわ!」
「残念ながら、宮廷魔法使い第四席に天井に張り付いている変態がいるんですけど」
「世も末ですわぁあああああああああああああああ!」
「はっはっは! 今もウルの幼ころの私物からたくさんの物があるよ。ちなみに、記録というのは彼女の名言集から、僕に飛んできた罵声の数々、ジョナサンおじ様がウルを叱った回数や、途中から泣き言に変わった瞬間などを鮮明に記録してあるのさっ!」
「――え、きも」
「……ガチめのやつは僕も傷ついてしまうのだけどね!」
ぽたっ、と落ちてきた雫はきっと涙ではない。
「僕はね! ウルと出会ってから、ずっとずっと集めてきたのさ! もう彼女のことは可愛い妹として見るようになったけど、妹は妹として可愛いのはかわらんのだよ! そして、麗しのサムと結婚し、子作りし、子供をおぎゃぁあああああああと産んで幸せな家庭を築く家庭を記録する義務が僕にある!」
「ねえよ!」
「これからも僕はコレクションし続けるだろう! ウルとサムの奇跡の軌跡を!」
「うまいこと言ったみたいな感じになってんじゃねえよ! とりあえず降りてこい!」
「ふっ、甘いな。――いつから僕がひとりで降りられると勘違いしているのかな? 助けて」
「ずっとそこにいろぉおおおおおおおおおおおおおお!」




