31「見上げたらぎゅんぎゅんがいました」①
エヴァンジェリンをはじめ、祖父、薫子、モンドたちに挨拶をしてサムは神殿を出た。
途中、ヴァルレインの代わりにギュンターとクリーの出産祝いを頼んだ。
すでに色々贈り物をもらっているイグナーツ夫妻なので、実用的なものがいいだろうと思い、タオルの詰め合わせにした。
せっかく城下町に足を運んだのだから、子供たちにも何かを買おうと考え、リーゼたちからすでに色々買っているのでしばしおもちゃなどの購入は控えるようにと言われていることを思い出したので、のんびり店を回って、店員と話をした。
しばらくして、また来る約束をして手を振り、帰路についた。
「ただいまー」
「お帰りなさい、サム様」
出迎えてくれたのはオフェーリアだった。
彼女の背後にはジェーン・エイドも控えていた。
準魔王である男装の麗人は、美しい佇まいでサムに一礼すると微笑む。
「オフェーリア、ジェーンさん、ただいま。今日は領地に行くって言っていなかったっけ?」
「その予定でしたけれど、クリー様も色々大変でしょうからお手伝いをしようと思いまして。もっともギュンター様がなんでも率先して動いてくださっていますので、クリー様とお話しするくらいしか役目がありませんでしたわ」
「……ギュンターも良いパパだ」
「そうですわね。スカイ王国が誇らない問題児だったのが嘘のようです」
「……だよねー」
ギュンターとクリーの出会いを思い出す。
散々結婚は嫌だと逃げ回り、捕まって泣き叫んでいたのがつい昨日のようだ。
その後、毎日が慌ただしく、ギュンターがクリーに「あんなことやそんなこと」をされてしまったり、ギュンターが攫われてクリーが荒ぶったりすることもあった。
「ウル様とサム様に執着していたギュンター様が父親に……わたくしは付き合いは浅いですが、それでも感慨深いものがありますわ」
「……このまま俺たちから卒業してくるといいんだけどね」
「――卒業? 違うよ、サム! 僕の麗しの宵月よ!」
天井から声が降ってきた。
まさかと思い三人が顔をあげると、天井にギュンターが張り付いていた。
「……忍びかよ」
「害虫ですわ!」
「魔力も何も使わず、私たちに気づかずに……さすがと思うべきか、言動に驚くべきか悩みます」
普段から冷静で涼しげなジェーンでさえ、ギュンターの奇行に眼を丸くしている。
「一応、聞いておくけど、何しているの?」
「ふふふ、ふはははは! よくぞ聞いてくれたね! ウォーカー伯爵家のみんなにはたくさんお世話になったからね。手の届かないところをお掃除しようかと思ってね。間違っても、僕の収集してきたウルグッツ、サムグッツをこれを機に捨てるようにと酷いことをいう父親から逃げているわけではないから誤解しないでくれたまえ!」
自分で説明しているじゃん、とサムたちは思った。
同時に、結婚しても、子供ができても、こいつ変わらないなぁと少ししんみりした雰囲気がどこかに飛んでいったのがわかった。




