30「陛下と公爵のお話です」②
「……陛下、みんなも言っているけど、そのとりあえずビンビンでゴリ押ししようとするのはやめておきなさいよ。毎回反応しちゃうゾーイちゃんがかわいそうよ。……まあ、もうスカイ王国定番のやりとりとなってしまった感じはするのだけど」
「ゾーイの響き渡るツッコミには親愛と友情が込められているのである! いずれは我が義理の娘になる子であるゆえに、お互いに遠慮はいらないのである!」
いずれゾーイもサムと結婚する。
厳密に言えば、娘ではないのだが、甥の妻なのだから家族であることは変わらない。
クライドをはじめ、サムの妻たちの親は友人であることから、それぞれの子を我が子のように可愛がっているのだ。
ゾーイがクライドに娘として認識されているのは、無理もないことだ。
「さて、仕事も無事に終わったのである。お茶を――と言いたいが、私には可愛い孫を見守るという任務があるゆえこれにて失礼するのである」
「お待ちなさい」
いざウォーカー伯爵家にいかん、とするクライドに冷たいイーディスの声がぴしゃりと響いた。
椅子から腰を浮かしていたクライドは、素直に従い座り直す。
「これ、どうするの?」
「おおっ、こんなところに書類があったのであるか!? これは大失態であるな! どれどれ」
とてもわざとらしい演技をしながら、クライドは書類を手に取り目を見開いた。
「――なんと! 男体化祭りの希望であるか!?」
「白々しいわねぇ」
「女体化祭りをしたのであれば、男体化祭りをするのも真の男女平等である! うむ! 良きビンビンであるな! このクライド・アイル・スカイ、普段は気さくなおじさんであるが話のわかるナイスミドルでもある! 男体化祭り、大いに結構! ――承認であ」
「待ちなさい」
ノリと勢いだけで判子を押そうとしたクライドの腕を、イーディスの手が伸びて止めた。
「何をするのであるか、イーディスよ。書類に不備はないのである。むしろ、先日の女体化祭りよりも念入りに綿密な計画である」
「そうね、その前に腕の力を抜きなさい」
「嫌である!」
「力を抜かないと、あなたの可愛い弟のあんなところやそんなところが……男には想像できないようなことになるわ」
「何をするつもりであるか!?」
「いいから、力を、抜きなさい! あなたのかわいい甥っ子をつまみ食いするわよ!」
「――さすがにそれはナシであろう!」
ようやくクライドの腕から力が抜けたので、イーディスは素早く判子を奪った。
代わりに書類を取り、眼を通す。
「私もね、楽しいことは好きだし、男体化した暁にはしてみたいことも山のようにあるのだけど……今、する?」
「神を退け、神が降伏した。まだ敵はいるのであるが、まずは祝いたいのである! そして、愛情と戦いの女神ヴァルレインとマニオン・ラインバッハをスカイ王国に歓迎する意味を込めての祭りである!」
「……マニオン・ラインバッハ殿は、倒れたそうよ」
「何故!? ――っ、まさかサムとの戦いの後遺症であるか!?」
そうであればあまりにも残酷だ。
兄と弟が戦い、これから共に歩んでいけるはずだというのに。
クライドの瞳から涙が溢れた。
「悲しんでいるところ悪いけれど、マニオン殿が倒れた理由はサムじゃないわ」
「では、なんであるか!?」
「この国が誇る由緒正しい変態たちのせいよ」
「どうしてー?」
心底わからない、とクライドは首を傾げた。
シリアス先輩(怒)「イラッとすんな、最後! 急に口調かるんじゃねえよ!」
今日七夕ですね。子供の頃は、商店街にイベントはありましたが、現在はその商店街そのものがないという悲しみです。




