46「綾音っちの再会です」③
「ちょっとちょっとどうすればいいの? あの嘆いていない嘆きのヘルミーナをぶっ殺したいんだけど!」
「安心てください、おっかーさまぁあああああああああああああ!」
「お前が落ち着け、おらっ」
「ありがとうございますっ!」
慌てる綾音だが、妹に腹を殴られてお礼を言っている息子を見て「すん」と冷静になった。
「それで、あんたたちが出てきたってことは、こう、不思議なことが起きるんでしょう?」
「さすがお母様! 現在、僕とアイリーンのママだいちゅきパワーで、お母様の命を繋ぎ止めています!」
「あ、ありがとう? でも、そのネーミングは」
「死にかけているのにそんなこと気にしないでください!」
「……正論言われたのに、こいつ殴りてえ」
急に真顔になる息子を見て、綾音はつい拳を握りしめてしまう。
そんな息子が現在の事情を話してくれた。
「さくっと説明しちゃいますけど、僕たちの力でお母様の命を繋ぎ止めています。時間もお母様の心の中なので経過していません。現実のお母様は白目剥いてアヘ顔ダブルピースしていますね」
「そうなの!?」
「お母様……さすがに兄上が見ている幻覚って気づいて欲しいかな」
「あ、そうなのね。――幻覚!? どんな幻覚みているの!?」
「まあまあ、些細なことです。気にしないでください、お母様」
「そうそう、いつものこと」
「母親として、いえ、人として気になるんですけど!?」
不思議だ。
スカイ王国に関係ない息子から、スカイ王国の匂いがする。
そんな息子が急に苦々しい顔をしたから、綾音は驚いた。
「ルー?」
「お母様は、なぜ勇者としての力を本気でお使いにならないのですか?」
「そんなことないわよ。私は――」
「ううん、お母様は全力じゃない」
「そんなこと、ないわよ」
否定している綾音だが、その言葉に力がない。
綾音自身、全力で戦っている「つもり」だったので、子供たちの言葉に一番戸惑っている。
「僕もアイリーンもお母様の中にいるのでわかるんです」
「お母様は勇者の力を忌避している。だから、無意識に全力で戦えていない」
「……そっか」
綾音は、子供たちの言葉に納得してしまった。
確かに、勇者の力を、いや、勇者であることを綾音は嫌っている。
勇者として戦い、多くの仲間を失った。救えない命がたくさんあった。多くの命を奪いもした。
だから、勇者が嫌いだ。
現代に生きる人々のために、こんな自分を家族として迎えてくれた人たちのために、戦うと決めたのに――無識に力を使うことが嫌であったのだ。
「お母様、息子の僕だからこそ言いたいことがあります。お母様は何も悪くないんです。悪いのは、平和な世界からお母様とおばさまを召喚した国です。お母様たちは被害者なんです」
「同感。異世界から勇者と聖女を呼んで、代わりに殺し合いをさせなければいけないような国なら滅ぶべきだった。魔族の方がまだマシだった」
「……あんたたち、一応その国の王族だからね?」
「知ったことじゃありませんよ! 僕はお母様の息子です! それ以上でもそれ以下でもありません!」
「私も。お母様の娘。それだけでいい」
「あんたたち、せっかくこうやって会えたんだから思いっきり抱きしめさせなさいよ」
嬉しそうにルーシェルとアイリーンが綾音に近づく。
綾音は手を伸ばしふたりを抱き寄せると、思い切り愛しい我が子を抱きしめた。




