45「綾音っちの再会です」②
「お母様っ、嗚呼、お母様! お母様ったら、お母様ぁっ! 相変わらず平らな――いえ、慎ましいお胸ですね! なちゅかちぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「大きなっ、お世話だぁっ! 慎ましくて悪かったな!」
我が子と再会ならば、本来は感動する場面のはずだが、ルーシェルの余計な台詞にいらっとした綾音が力を込めて肘を息子の頭に振り下ろす。
「あひんっ!」
「ルーがいるのなら、モアイもいるんでしょう! 早く出てらっしゃい!」
「やっほー」
森の奥から、娘のアイリーン・スカイが手を振って現れた。
どこかダウナー系を彷彿する少女だ。
見間違うことなどない。
かつて、血縁があることを隠し、綾音と一緒にした我が子たちだ。
「久しぶり、お母様」
「あんたはあんたでマイペースね」
「うん。なんというか、お兄様みたいに全力出すの疲れる」
「そりゃこんな愉快に全力出していたら疲れるでしょうけどね!」
綾音にどこか似た少年と少女。
少年は、ルーシェル・カイト。
少女は、アイリーン・スカイ。
綾音が封印された後に、それぞれ家庭を持ち人生を謳歌したことは知っている。
だが、目の前にいるふたりは、綾音が一緒にいた時の姿だった。
「一応、聞いておくけれど、これ、夢?」
「今もお母様にこれでもかと顔をぐりんぐりんしているお兄様は残念ですが、夢ではありません」
「そうよねぇ。摩擦が熱いんですけど!」
「お母様ぁあああああああああああああああ!」
「あとうるさい!」
「まあまあ、せっかくの再会――あ、いえ、そういえば、少し前に夢で会いましたね」
「見た! その夢知ってる! いい夢見たなーって思っていたけど、お前たちの干渉か!」
懐かしい。
本当に懐かしい。
ここまで明け透けではなかったが、ルーシェルもアイリーンも綾音に遠慮なく接してくれた数少ない人物だった。
当時は、まさかこのふたりが我が子であるなど夢にも思わなかった。
「……せっかく会えたのだから、謝らせて。ごめんなさい、私、ちゃんとお母さんできなかった」
謝罪する綾音に、ルーシェルとアイリーンは驚いた顔をした。
ルーシェルに至っては、驚きすぎて綾音から離れてしまうほどだ。
そして、兄と妹は顔を見合わせて、吹き出した。
「ははは、お母様! 何をおっしゃいますか、お母様! お母様ったら、本当にお母様なんですから!」
「確かにお母様は私たちを子供として認識していなかったけど、それだけのこと。お母様が私たちにしてくれたことは、母親と変わらない」
「そうですよ! むしろ、僕の友人の貴族のお母上などはもっとそっけないそうですよ。長男くらいですかね、よくしてもらえるのは。それも世知辛いですよねぇ。そう考えると、魂で僕たちを我が子だと察していたお母様! 素敵! 無敵! さすが封印されし女神!」
「おい、最後の褒め言葉じゃねえだろ」
流れていた涙が止まった。
「なんというか、あんたたちは本当にあんたたちね」
「そう簡単に変わってたまるものですか!」
「そうそう、簡単にかわらない」
「そうね」
「ところで、お母様。久しぶりにこうして再会できてパーティーをしたいのはやまやまなのですが、気づいていますか?」
「なにを?」
ルーシェルの問いかけに、綾音は首を傾げた。
「お母様、死にかけている」
「――あ」
アイリーンの指摘に、綾音は嘆きのヘルミーナによって胸に大穴を開けられたことを思い出した。
「いやぁ、時間がないのに家族の再会を堪能してしまいましたね! ルーシェルくん、失敗失敗!」
「もうお兄様ったら」
「はっはっは!」
「あははー」
「笑い事じゃねえからぁああああああああああああああああああ!」




