44「綾音っちと再会です」①
――時間は少し遡る。
日比谷綾音は胸の大穴を開けられてしまった。
力は「神」としての力を使っていない綾音の方が「神」であるヘルミーナに劣っていた。
綾音は「神」になりたくてなったわけではない。
「神」になったことで長い時間、「影響」を受けており、多くの過ちもした。
それゆえに二度と「神」として振る舞わないと決めている。
――たとえ、その結果死ぬことになっても、だ。
しかし、綾音のその決意のせいで、過去の自分に戻ってしまっていた。
ヘルミーナの指摘通り、勇者の力を使って長時間の戦いを経験したことは、復活後ない。
聖剣にした仲間の剣を振るいながら、敵を殺すことを考えてばかりいたせいだろうか、昔の、「神」の干渉を受けていた頃の自分に戻ってしまっていた。
ヘルミーナの自身の変化を指摘され、動揺した結果がこれだ。
「あーあ、やっちゃったー」
意識を亡くしたはずの綾音に、なぜか明確な意識があった。
草木の香りが鼻腔をくすぐる。
神々と戦っていた場所は、ウルのせいで炎と灰、そして焦げた匂いばかりだった。
「え、なにこれ?」
さすがにありえない、と思い身体を起こす。
不思議なことに、胴体に穴が空いていない。
手で胸を触ってみるが、慎まやかな膨らみがあるだけで、血も流れていない。
「えっと、夢? じゃないわよね。さすがの私も戦いの最中に寝たりしないし。あれ、もしかして、死後の世界だったりしちゃうの!? やっべー! 私、死んだ!?」
綾音は大いに慌てた。
まさか負けてしまったのかと思い、立ち上がり、首を傾げた。
「いや、だから、なんで森の中にいるんだよ! 死後の世界ってもっと綺麗なお花畑じゃないの!? 木々が多い茂る森ってなんか違くない!?」
「まだ死んでいませんよ」
「――誰?」
声がした。
どこか幼い少年のものだった。
木々に囲まれた森の中を探る。
すると、――いた。
木の影からじぃっとこちらを見つめている少年だ。
「――あ」
目が合った。
次の瞬間、少年が滂沱の涙を流しながら大きく両手を広げて走って来た。
「お母様まぁああああああああああああああああああああんっ!」
綾音の息子――ルーシェル・カイトが抱きついて全力で頬擦りをしてきた。




