40「ウルとグリムレンの決着です」②
ウルの右腕から聖剣が消えたと同時に、前のめりに倒れてしまう。
「あー、楽しかった」
満身創痍となりながら、満足したと言わんばかりの顔をしている。
ヒールをかけようとしたが、魔力がまったくない。
「……このまま死ぬなぁ」
やり残したことは山のようにあるが、満足する戦いをしたので死ぬことは不思議と怖くない。
だけど、愛する少年と結婚し、子供を産めなかったことだけは心残りだった。
そんなウルに、どこからともなく魔力が飛んできた。
半分ほど魔力が回復し、ヒールが始まる。
同時に流れてくる大量の魔法の情報に頭痛を覚えてしまう。
「くっ、これは……グリムレンの、魔力と、情報? ――継承魔法か!」
魔力が空の状態から大きな魔力が入ってくる感覚は、違和感と痛みが伴ったがおかげで死ぬことはなかった。
死を怖くはなかったが、生きていられることにホッとした。
軋む身体を無理して動かし仰向けになる。
雲ひとつない空が綺麗だった。
「ちゃんと受け取ったぜ、グリムレン。偉大な炎の魔女、お前の生きた証は私の中で生きていく」
おそらく、グリムレンはウルとの戦いに敗北することを寸前で理解したのだろう。
短い時間に継承魔法の準備をし、ウルの魔力がすべて消費されることを予想し、己の技術だけではなく魔力も込みで継承させてくれたことに、感謝しかない。
これにより、ウルの魔力の枠がさらに広がった。魔力回復まで時間がかかるだろうが、半分も魔力があれば十分だ。
継承された魔法は、グリムレンが長い時間、研鑽を重ねた結果だった。
ウルの知らない美しい魔法が数多存在している。
炎の魔女であるグリムレンだが、水属性魔法、風属性魔法、土属性魔法、光属性魔法、闇属性魔法も多く学んでいることがわかった。ウルは炎特化型だが、他属性の優れた魔法使いがいれば継承させようと思う。
継承魔法の中に、グリムレンの「意思」も込められていた。
グリムレンが学び、習得し、作り上げた魔法を未来に繋いで欲しいこと。
かつてウルが死を目前にしてサムに全てを託したように、グリムレンは自分に託してくれたのだ。
「――お前の魔法は全て未来に繋げると約束する。私の中で眠れ、炎の魔女グリムレン」
肉体の回復が終わり、ウルはゆっくり立ち上がる。
しばらく戦うことはできないが、それまでゆっくり魔力と体力の回復に努めよう。
――グリムレンの「意思」から、このくだらぬ戦いの黒幕を知ったウルは「その時」に備え力を取り戻すことに専念するのだった。




