39「ウルとグリムレンの決着です」①
ウルの肉体を炎でもあり雷でもある炎雷火が襲う。
身体中に裂傷が生まれ、その傷を焼かれるという二重苦が数え切れないほど繰り返される。
常人ならば度重なる裂傷によりショック死するか、それよりも早く身体がバラバラになっているだろう。
しかし、ウルの肉体は対魔法である上に鍛えられている。
本来ならば一つの裂傷が致命傷になるはずだが、ウルの肉体の頑丈さと、意識せずとも肉体が再生することから凄まじい魔法を一身に耐えていた。
――否、耐えているのではない。魔法を堪能しているのだ。
人として生き魔力を研鑽し、神に至った魔女の最高の一撃をあえてその身に受けているのだ。
ウルリーケは、身体中を血に染めて笑う。
身体中を焦がしながら、笑う。
「まったく、魔法っていうのは最高だな!」
痛みすら快感だ。
これほどの魔法を使えるまで、どれくらい努力をしたのだろうか。
ウルはグリムレンに感服した。
――そして、最高の魔法には最高の魔法で応えなければならない。
ウルは右手に握る聖剣炎火の剣を掲げる。
頭上に炎が渦巻き、竜巻となる。
炎が風から酸素を取り込み、さらに、さらに炎の勢いを増していく。
そして、炎を圧縮する。
その繰り返し。
聖剣に生み出された炎の竜巻は、これでもかと密度を高めていく。
まだ限界ではない。
もっともっと魔力を高め、炎を集めるのだ。
ウルは炎を集め、圧縮することに集中した。
刹那、意識が全て炎に注がれる。
グリムレンの炎が身を焼き、雷が裂傷を産み、左腕がちぎれかけるも気にならなかった。
肉体を再生させる魔力がもったいなく、再生を拒否した。
魔力が限界まで集まり、限界を超えた。
ウルの額が割れ、血が吹き出した。
限界を超えた代償だ。
焼かれた唇で血を舐め、また笑う。
その笑みは、無邪気な子供のようだった。
気に入ったおもちゃを振り回す、わんぱくな子供のような笑顔だった。
これ以上のダメージを受けたら、死んでしまうだろうという一歩手前で、ウルの意識がグリムレンに向く。
子供のような笑顔から一般し、犬歯を剥き出しにした獰猛な笑顔となった。
「――聖剣っ、炎火っ!」
規格外であるウルの限界を超えた炎が、すべて聖剣炎火の剣に喰われ、消えた。
掲げた聖剣を一気に振り下ろすと同時に、グリムレンの炎と雷がすべてかき消された。
熱波が生まれ、この場にいる誰もが喉が焼けるのを防ぐため呼吸を止めて、口を抑えた。
――紅い刀身がグリムレンを斜めに両断した。
グリムレンの肩から下が一瞬で蒸発した。
肉体が一瞬で失われた事実に、グリムレンは驚いたように、満足したように、そしてウルに尊敬の目を向けてから笑った。
「――本当よね、魔法は最高よ」
その一言を残し、グリムレンは炎に包まれ消失したのだった。




