38「ウルとグリムレンの第二ラウンドです」④
「――なによ、それ」
ウルが己の身から抜いた聖剣は真紅の炎の剣だった。
ただ、剣の形状をしているが、剣ではない。
炎が剣としての形を作っているのだ。
刀身から柄まですべて真紅の炎だ。そして、身震いするほどの魔力が込められている。否、炎の剣から荒れ狂う魔力が放出されているのだ。
――人の身で使っていい力ではない。
ウルが「聖剣炎火の剣」を抜いた瞬間、圧倒的な力の差が生まれてしまった。
相対しているこの瞬間に、皮膚や髪が焼けていく。
「――なんて素敵な炎なの」
「褒めるなよ、照れるだろう」
「心からの称賛よ。いくら勇者とはいえ、そこまでの炎を顕現させて使えるなど私にはできない! 嗚呼、狂おしいほど羨ましい、憎たらしい!」
羨望の視線を向けるグリムレンに、ウルが炎火の剣を向けた。
たったそれだけの行為で、熱が刃となってグリムレンを襲った。
「聖剣抜剣なんてかっこつけたのはいいんだが、実は、一振りだけしかできないんだよ。使う相手がいなかったっていうのもそうだが、どうも勇者の力っていうのはズルしているようで面白くない」
「根っからの魔法使いなのね。いえ、戦闘狂かしら?」
「ははは! どっちもだ!」
ウルが笑っている間に、グリムレンが「炎雷火」にすべてを注ぐ。
すべてとは魔力だけのことではない。
精神力も体力も、そして――命も。
何もかもを注いで、初めてウルの「聖剣炎火の剣」と戦える。
グリムレンは負けたくなかった。
同じ炎の魔法使いとして。
長い間求めていた、最高の相手に勝ちたかった。
――きっとこの魔法を撃った後、奇跡的に生きていても、もう魔法使いとしてすべてを失うだろう。それでも、勝ちたかった。
ウルに勝つことで、グリムレンの魔女としての日々が報われるのだ。
今まで嫌われながら、憎まれながらずっとずっとずっと魔法を学び、鍛えてきた。
研鑽を繰り返したグリムレンの魔法を、最高の相手にぶつけることができる。
これほど魔法使いにとって幸せなことはない。
「……名残惜しいけれど、最後の一撃にしましょう」
「まったく名残惜しいな! だけど、勝つのは私だ」
「ふふふ、面白いことを言うじゃない」
「いや、絶対勝つの私だから」
「私が勝つわ」
「だから私だし」
「私よ」
「私だ!」
「私よ!」
にぃ、とウルとグリムレンが笑った。
「――焼き斬り殺せ――聖剣、炎火の剣っ!」
「――焼き尽くしなさい、炎雷火っ!」




