36「ウルとグリムレンの第二ラウンドです」②
ウルとグリムレンの拳がお互いを貫いた。
「――はっ」
「……やはりね」
しかし、ふたりとも炎を纏いながら、攻撃を受ける時に一時的に炎と化すことができているため、ノーダメージだった。
「いいぜ、いいぜ、グリムレン! ならば、お前の炎をかき消してやるぜ!」
「それはこちらのセリフよ!」
炎を纏ったまま、ウルが大きく手を掲げ、手を合わせた。
「――火走り」
手をまっすぐに振り下ろす。
ウルの重ねた手から、炎が一筋の刃となってグリムレンを襲う。
「――火走り」
対し、グリムレンも足元で手を合わせると、掬い上げるように一筋の炎の刃を振り上げた。
「――ははははっ!」
奇しくも二度目の同じ魔法を使ったことに、ウルが高笑いを上げた。
炎の刃が重なり、火花を散らす。
単純に刃に注いだ力はグリムレンの方が上だが、魔法そのものの火力はウルの方が上まっている。
バチバチと音を立て、ふたつの「火走り」が拮抗する。
「まだまだ力が余っているだろ! 次のことなんか考えずに、これで決めるくらいの気概を見せろやぁああああああああああああああああああ!」
「――このっ、好き勝手に言って!」
ウルとグリムレンが揃って「火走り」に力を込めた。
本来の「火走り」は一筋の炎の刃を縦横無尽に走らせて、焼き斬る中距離魔法だ。
それを至近距離で使いこなせるのはウルとグリムレンくらいだろう。
魔力を込めて殴った方が早い距離で、あえて炎の魔法で戦うのは、炎の魔法使いと炎の魔女の意地だった。
――そして、ふたりの「火走り」がついに相殺されてしまった。
強い魔法が消えたことで衝撃波が生まれ、しばらくして火の粉が雨のように降ってきた。
火の粉がウルとグリムレンの肌を焼くが、ふたりは気にした様子もなく楽しそうな顔をしていた。
「さてと、次はどの魔法を使おうかな!」
「そうね、悩むわね」
まるでお互いの魔法を魅せ合うように、ウルたちは笑っている。
「ちょっと待っていて、切り替えるから?」
「なにを?」
ウルの疑問に、グリムレンは神力から魔力に己の力を切り替えた。
「――おおっと」
「神の力は捨てたわ。まあ、この身が神になっているのは変えられないんだけど、あなたには些細な問題でしょう?」
「そうだな、まったく問題ない! だけど、なぜ神力を捨てた?」
「私ね、目が覚めたの。だからなんだって、思うかもしれないのだけど、神力を使って戦うことと魔力を使って戦うことじゃ私の中で違うのよ! 魔女のプライドが、許せないのよ!」
グリムレンから魔力が吹き荒れ、炎となる。
凄まじい魔力量に、ウルの顔が歓喜に染まる。
「――私よりも魔力量を持つのはサムくらいかと思っていたんだが、世界は広いな。というか、神力の方が弱いじゃねえか! さっさと自前の魔力を使えよ!」
「あら、失礼。私ね、自分の魔力のことを忘れていたの」
「なんだよ、それ」
「ふふふ、何かしらね」
グリムレンの意味ありげな言葉が気になるが、それよりも戦いを楽しみたい感情が勝った。
「――ふぅ」
ウルは大きく息を吐き出した。
そして、グリムレンに負けぬ魔力を解き放つ。
「あなたも大概ね」
「褒めるなよ。褒めるなら、これからだ。戦神を殺すために温存してくつもりだったが、お前にすべての力を使うと決めたからな、見せてやるよ。――勇者の力をっ!」




