34「ヘルミーナの攻撃です」②
「ウルっ!」
「ちょっと、ウル! あんたどうしちゃったの!?」
片膝をついただけではなく、そのまま前のめりに倒れそうになったウルをサムが抱き抱え、綾音が驚いた顔をして駆け寄ってきた。
カリアン、友也、レプシーはウルを守るように立ち塞がる。
「あは、あはははははははははははは! さあ、ウルリーケ・ウォーカー・ファレル! あなたの嘆きを聞かせなさい!」
ヘルミーナの高笑いが耳障りだ。
ウルは、ゆっくりと立ち上がると、ヘルミーナを真っ直ぐに見た。
「――いや、嘆くことなんてなにもないし」
「ほえ?」
まったく嘆かなかったウルに、ヘルミーナが変な声を出す。
激情のランドルフも「ヘルミーナの嘆きが効かない、だと!?」と驚愕に包まれている。
紅のグリムレンは白けた顔をしていた。
「そんな、馬鹿な、私の嘆きは確実にあなたを」
「あー、効いた。確かに、お前の力は私に効いたぞ」
「なら、なぜ」
「いやぁ、私も嘆こうと思ったんだが、――嘆くことなどない! 私は日々後悔なく生きているからな!」
きりっ、とした表情をしたウルに、膝をついてしまったヘルミーナが「嘘よ」と信じられないものでも見るような視線を向ける。
「この戦いの前に、サムと一晩過ごせなかったのは後悔だが、まあ、問題はないだろう。なぜなら、私たちがお前たちに負けるはずがないのだから! 遅かれ早かれだ。つまり、嘆くことではない!」
「ちょ、ウルさん! そんな大きな声で言うのやめて!」
サムはちょっとだけドキドキしていた。
もし、サムがヘルミーナの力を喰らっていたら、言わなくてもいいことを嘆いていたはずだ。
こう言うところは、ウルの豪快な性格が羨ましくなる。
「……ならば!」
ヘルミーナは諦めず、対象を変えようとした。
だが、走りグリムレンの脇をくぐり抜けた綾音がヘルミーナの顎を全力で蹴り上げた。
「ラッキースケベ大魔王を嘆かせたって、スケベなことしてすみませんって言うわけないでしょう! むしろ、ラッキースケベをもっとたくさんしたかったって叫ぶくらいなのはわかっているじゃない!」
「ちょと、綾音さん!? そういうこと言うのやめてくれません!? 僕、そんなこち思っていませんからね!?」
顎が砕けたヘルミーナの顔を掴み、再生する時間を与えず地面に叩きつける。
もともと砕けていた地面がさらに砕けるが気にせず綾音は繰り返し、ヘルミーナの頭を地面に叩きつける。
綾音の手が真っ赤に染まり、血飛沫が顔に飛ぶまで、淡々と繰り返した。
いきなりすぎる攻撃をすべて受けてしまったヘルミーナがぴくりともしなくなる。
彼女の頭を掴み、持ち上げた綾音。
ヘルミーナを宙に放り投げると、神力を圧縮し、砲撃として撃った。
魔力の塊がヘルミーナに直撃し、上半身を消し飛ばした。
しばらくして、ヘルミーナの下半身が音を立てて地面に落ち、足がひしゃげた。
「さっきの続きをしましょう。ウル、紅のグリムレンを今度こそ殺しなさい」
「おうよ」
「サム、カリアン様、レプシー、変態は激情のランドルフを殺しなさい」
「任せて!」
「承知しました、綾音様もご武運を」
「ああ」
「待って待って、僕だけ変態って、もうラッキースケベ大魔王とすら呼んでもらえないですけど!」
「さっさとこいつらぶっ殺して家に帰りましょう!」
「聞いて!?」
友也の悲鳴を無視して、綾音たちは全力を持って神々を殺すために力を解放した。




