33「ヘルミーナの攻撃です」①
一瞬で灰になってしまったケールのことなど気にした様子もなく、「んんんっ」と大きく背を伸ばし、ウルは立ち上がった。
「悪い、途中でつまらなくなったから寝ちゃった」
「ウルぅ!」
「悪い悪い! でもさ、ちまちまちまちまちまちまやりやがって! お前らもなに真面目に相手にしてやっているんだよ! さっさと大本を叩けよ! のんびりやってんじゃねえよ!」
「寝ていたウルには言われなくないだけど!」
「それはそれ、これはこれ、だ!」
「理不尽!」
居眠りをしていたウルだが、彼女の言い分もわからなくはない。
真正面から敵をひとりひとり相手にせず、嘆きのヘルミーナを殺して仕舞えば良かったのだ。
しかし、サムの言い分としては、弄ばれた命に対しできることは真摯に向き合うことだけだと思ってしまった。
戦いの最中だが、感情的になってしまったのも言い訳のできない事実だが、サムは自分がしたことを正解とは言わないが間違っていたとも思えない。
「まあいいさ。サムのそういう甘いところが私は気に入っているんだ。しばらく休んでいろ。くだらないことをしたあの女神は――私が殺してやる!」
ウルの魔力が炎ととして吹き荒れる。
近くにいるサムが汗を流し、強い喉も渇きを覚えた。
そして、ウルの炎から怒りを感じ取った。
「かかってこいよ、値切りもモルミーナ!」
「……嘆きのヘルミーナだよ」
「そうとも言うな!」
かかか、とウルが笑いながら足を進めた。
彼女は爪を噛んでいるヘルミーナをまっすぐに見て、歩き続ける。
「サムたちの怒りは私の怒りだ。安心しろ、弄んだ命よりももっと酷い目に遭わせてやる」
「人間風情がっ! 私の最高傑作を! ウルリーケ・ウォーカー・ファレル! お前を殺すためだけに、サミュエル・シャイトよりも危険な貴様を殺すために私がどれだけの準備をしたと」
「……魔力消費したからお腹減ったなぁ」
まったく言葉を聞いていないウルに、ぶつんっ、とヘルミーナの中で何かが切れた。
「ウルリーケぇえええええええええええええええええええええ!」
もうヘルミーナから余裕も冷静さは一切ない。
「――殺してやる! お前の心を、引き裂いてやる! 嘆け、ウルリーケっ!」
「死ぬのはお前だ。――燃えろ」
ヘルミーナの叫びに対し、ウルが炎を放った。
神をも焼き尽くす炎がヘルミーナに直撃するよりも早く、ウルと一度戦って敗北したが死んでいなかった紅のグレムリンが盾となり炎を受け止めた。
「お、まだ戦えるのか! いいな! 第二ラウンド――を?」
ウルが急に片膝をついた。
「――ウル!?」
突然のウルの変化に、サムが叫び駆け寄ろうとするが、彼女が手を上げ制した。
なに起きたのかわからないから近づくな、ということだ。
サムは唇を噛んで従った。
「ふ、ふふ、あははははははは! ウルリーケ、あなたもサミュエルも精神攻撃に弱いことは把握しています。私は嘆きのヘルミーナ! あなたの心の中の嘆きを大きくし、精神から殺します。すでにあなたに私の力が届いています! さあ! 嘆き、苦しみ、死になさい!」




