32「神の最高傑作ケールです」
「――はじめまして」
嘆きのヘルミーナが最高傑作と謳ったケールは、今までの白い子供たちと違って流暢な言葉を話した。
白い長い髪を、かきあげる姿は、全てが白いことを除けば普通の人間と変わらないように見えた。
偉業らしさはない。肌と髪の色が白いだけ。
「初めましてじゃないんだよ。あんた、兄弟を俺たちに殺されて、最初に言う言葉が初めましてか?」
「挨拶は大事じゃないか。そもそも、生まれた瞬間から僕の糧となることが決まっている奴らが死んだところで、どうって言われても困るよ。奴らは目的を果たした、よく頑張ったね、それだけかな?」
「…………俺が言う資格はないが、あんまりじゃないか」
「あんまり? 僕にはわからないなぁ。まあいいや。どうせみんなの殺しちゃうんだし、つまらないことは考えないにようにしよう!」
ケールはそう言って笑う。
男とも女ともわからない中性的な顔で、ケラケラと笑い続ける。
サムは心から残念に思った。
自分で殺しておいてなんだが、まさか異形の子供たちが仲間にその死を悲しまれないとはやりきれない。
「わかった、もういい。お前もすぐに殺してやる」
「いやだなぁ、サムったら、僕のことそんなに怖い顔で見ないでよ」
「俺の名前を気安く呼ぶな」
「短い間だけど友達になってあげようって思ったのになぁ。ま、いいや。でもね、僕の相手は君じゃないんだ!」
不思議そうな顔をするサムに、ケールがバカにするように笑った。
「嫌だなぁ、サムって自分が世界の中心だと思っちゃっている系かな? そりゃサムはママたちから警戒されているけど、一番怖いのはウルリーケだよ?」
「――まさか」
「そう! 僕はウルリーケを殺すために生まれてきたんだ!」
次の瞬間、ケールは地面を蹴った。
風圧でサムたちを吹き飛ばさんとするほどの凄まじい速度だった。
ケールは地面に胡座をかいているウルに向かってまっすぐに向かった。
「ちょ、ウル! あんた寝ているでしょ! 起きて!」
敵が接近してくるのにいつの間にかうたた寝しているウルに、サムが突っ込んだ。
しかし、心配はまったくしていない。
ケールの魔力は規格外であり、サムたちが兄弟にした攻撃を学習していることも確かなのだろう。
だからと言って、ウルリーケ・ウォーカー・ファレルを殺せるものか。
「こんにちは! そして、さようなら! ウルリーケ!」
ケールはウルに間合いに入る瞬間に、大きく手をあげた。
同時にウルが目を開ける。
「―――全てを斬り」
しかし、ケールが何かをするよりも早く、ウルに近づきすぎたことで、一瞬で灰になって崩れた。
「鬱陶しい。お前程度が私に近づけるわけがないだろう」
淡々とした声が響いた。
嘆きのヘルミーナが最高傑作と謳った作られた命であるケールは、ウルに触れることなく死んだ。




