31「嘆きのヘルミーナの目的です」
嘆きのヘルミーナがゆっくりと歩きながら手を叩く。
「戦闘お疲れ様でした」
その物言いに、サムたちの怒りが強くなる。
「お前……何がしたいんだ? 因縁のある人間を使徒にして、子供たちをけしかけて、何がしたいんだよ!」
「ふふふ、秘密です」
サムの背後から綾音が飛び出した。
「ふざけるなぁああああああああああああああああああああ!」
怒りに支配された綾音が全力で拳を振るう。
だが、ヘルミーナの前に障壁が展開し、轟音を立てて、地面が揺れた。
「あら、日比谷綾音様、このまま無理をすると腕が壊れてしまいますよ?」
「知るかぁ!」
綾音はさらに拳に力を込めた。
地面に足をつき、思い切り踏ん張る。
ヘルミーナの言葉通りに、指が折れ、血が吹き出し、千切れた。
それでも綾音は引くことがなかった。
「あなたは神に至ったはずなのに、なぜこうも人間に――」
言葉の途中で障壁に亀裂が走った。
よほど障壁に自信があったのか、ヘルミーナが大きく目を見開く。
対し、綾音は笑った。
――障壁が砕ける。
綾音の拳は勢いを削がれることなく、ヘルミーナの顔面に拳が突き刺さった。
鼻や頬骨が砕け、鮮血が舞う。
ヘルミーナはそのまま後方まで吹っ飛び、地面に激突した。
「――ヘルミーナ!」
ずっと静観していた激情のランドルフが叫び、慌ててヘルミーナのそばに飛んでいく。
「へ、平気よ、ランドルフ。でも、日比谷綾音は私たちが想像していたよりも、ずっと弱いわ」
「さすがヘルミーナだ。この状況で相手を見極めるとは」
「……私にぶん殴られて鼻血を出しているやつの言葉じゃねえんだよ!」
怒りに染まったままの綾音が神力を吹き荒らしながら、ヘルミーナに向かう。
しかし、ヘルミーナは障壁を破られた時とは違い、顔を再生させると余裕を浮かべた。
「別に私も本気を出したわけではありません。すべては予定通りです」
「――なにを言っているの?」
「今からわかります」
ヘルミーナが微笑むと、彼女の下に魔法陣が浮かんだ。
綾音はすぐに、また白い異形となった子供たちを呼び出すのだと察し、全力で震脚を繰り出した。
大地が揺れ、割れる。
戦いの場になっているすべての地面が大きく砕けた。
――だが、魔法陣は中に浮いたまま展開されていた。
綾音は舌打ちをした。
地面に展開していると思っての震脚だったが、地面は特に関係なかったのだ。
己の失敗が、相手に時間を与えしまったのだと理解した。
次の瞬間、――真っ白な青年とも女性とも見える白づくめの人型がゆっくりと魔法陣から現れた。
「紹介しましょう、この子はケール。あなたたちが殺した、末の子です。そして、今、戦ったあなたたちの攻撃を全て学び使える、私の最高傑作です!」




