30「綾音っちとカリアンが戦います」②
はじめに動いたのはカリアンだった。
「――光の剣」
魔力を光に変えて剣として振るう。
光の剣が短い髪の少年の手足を斬り落とした。
絶叫が上がるが、無視をする。
そのまま縦に光の剣を一閃した。
四肢を失い地面い倒れゆく少年は、空中で両断されて地面に血と臓物を撒き散らした。
赤い血溜まりが広がる。
――あまりにもあっけなく少年は絶命した。
カリアン・ショーンが群を抜いた強者であることは間違いないが、それでもあまりにもあっけなかった。
少年は、規格外の魔力を持っていた。魔力を攻撃として放つだけでも、初歩魔法を使うだけでも凄まじい威力になっただろう。
彼が殺意を持って攻撃すれば、カリアンは苦戦したかもしれない。
だというのに、少年は弱かった。
あまりにも、弱かった。
「……君は戦いを知らなかったのですか?」
亡骸から返事はない。
それでも問わずにはいられなかった。
少年は、他の仲間たちと戦った子供たちよりも自分を優れていると言った。
カリアンはその言葉を信じ、強敵として攻撃に手を抜かなかった。
外見は幼なくとも、戦士であると考え戦ったのだ。
「綾音様への一撃を止めた時に気づくべきでした」
カリアンは苦い顔をした。
「君は、拳の握り方すら知らなかったのですね」
中身はどうであれ、外見だけではなく内面も子供だった。
ただ強すぎる力を与えられただけの、哀れな幼い命だった。
――カリアン・ショーンは言葉にできない感情を抱き、拳を血が出るまで握りしめた。
■
同時刻綾音も少年に攻撃をしていた。
カリアンに腕を潰された少年は、片腕と足で攻撃をしてくる。
綾音は軽く防御をするだけで、攻撃はしない。
――否、できない。
彼女も、カリアン同様に、少年が力だけを持つ子供であるとわかってしまったのだ。
息子と娘の存在を思い出した今の綾音には、殺さなければいけないとわかっていても、攻撃ができない。
「――綾音さん!」
防御を続けるだけの綾音の間に、自身の倒すべき相手を倒したサムが割って入った。
「……サム、ごめんなさい」
背後から綾音の謝罪が聞こえる。
サムも、今の綾音に子供を攻撃できるとは思えなかったので飛んできたのだ。
目の前の少年は、綾音への攻撃が邪魔をされたことがよほど嫌だったのだろう。苛立ちを隠せず地団駄を踏む。
やはり子供だ。
敵を目の前に癇癪を起こすようでは、規格外の魔力も宝の持ち腐れだ。
「――全てを斬り裂く者」
斬撃が少年を縦に両断した。
少年は自分に何が起きたのかわからず、不思議そうな顔をしたまま半分に分かれ絶命した。
「……いい加減、怒りでどうにかなりそうだ! 嘆きのヘルミーナ、お前が前に出て戦いやがれ!」




