27「友也と白い異形です」②
魔王遠藤友也は大きな動揺をしていた。
(……針に貫かれたのはいい。内側から少し蝕まれているようですが、大きな問題じゃない)
少女の針には、神力が込められていた。
魔族にとって神力は毒である。
すぐに死ぬわけではないし、蝕まれた毒も戦いの後に休息を取れば消える程度だ。
だが、問題はそこではない。
(――この子は……転移能力者か!)
一度だけだが、間違いない。
――転移能力者に追いつけるのは転移能力者だけだ。
友也は身体中に与えられたダメージを回復させて呼吸を整える。
不思議と少女は友也をぼうっと見ているだけで動かない。
「……あなたは嘆きのヘルミーナに作られた存在であると聞いていますが……それでいいのですか? ただ戦うだけの生き物でいいのですか?」
「…………ぁ、ぁぁ」
やはり返事はない。
友也は残念に思う。
やはり目の前の少女は、自分たちと戦うためだけに作られた哀れな存在だった。
――ならば救わなければいけない。
「なあたの命がどのような形なのか僕にはわかりません。感情があるのかどうかもわかりません。――だけど、弄ばれていいわけがない!」
友也の魔力が限界まで高まった。
あまりにも強くなった魔力が身体から漏れ出していく。
少女が友也の変化に気づき、消えた。
「――まだ甘いですね」
友也は転移で応じた。
友也がいた場所に、頭上から大量の針が不利地面に刺さった。
「こちらですよ」
友也の声は、少女のさらに上から降ってきた。
「転移で人に近づくのであれば、息を止めなさい。できるなら、身体の機能を低下させるのです。そして、気づかれなかった時に、全力を持って攻撃する。――それが転移能力者の攻撃方法です。知っていますか? 達人と呼ばれる剣士は、背後に転移しても僅かに服がずれた音や、軋む肉の音で探知するんですよ。魔王じゃなかったら死んでいた、なんてことは山のようにあるんです」
少女の背中なに、膝を乗せる。
もがく少女の両手を掴む。
「ここだけの話、転移なんて対して攻撃の役には立たないんです。いつだって戦いは、圧倒的な暴力がしはいするんですから」
少女が転移を試みるが、彼女の肉体に無理やり魔力を流し込んで妨害する。
転移ができないとわかると少女が暴れようとするが、友也の膂力によってそれさえできない。
少女はそのまま腹から地面に落ちていく。
「――さようなら。いつか、神の支配なく生き返ったら僕のところに尋ねてきてください」
別れの言葉と共に、小さな詠唱を唱えると、地面が隆起し細く細かい槍が生まれた。
その数はざっと百を超えている。
友也は少女の背中を蹴る。
転移どころか、何もできずまま、少女はついぞ言葉を発することなく数多の槍に身体中を串刺しにされて絶命した。
「……ふう。気休めかもしれませんが、あなたの転移はカルミナよりも才能がありましたよ」




