24「綾音っちの一撃です」②
「ちょっと綾音さん! 馬鹿力なんだからもっと考えて攻撃してよ!」
「ば、馬鹿力じゃないもん!」
地面を何度も転がったサムが、砂埃を叩きながら抗議の声を上げる。
綾音の拳は友也、レプシー、ウルも吹き飛ばされるほどの一撃だった。
唯一、カリアンだけが衝撃を予想していたのか障壁を張って耐えていた。
「おい、綾音」
「ひっ、ウルリーケさん!」
「この戦いが終わったら覚えておけよ」
「ぴっ」
自慢の赤毛を砂まみれにされたウルがにこやかな笑みを浮かべている。
しかし、彼女の目はまったくもって笑ってなどいなかった。
「やれやれ」
「さすが勇者にして女神の一撃というべきかな」
友也とレプシーも立ち上がる。
魔王や魔王同等の力を持つ者を容赦無く吹き飛ばしてしまう綾音の力は流石だった。
「……綾音さんへのお仕置きは後にして、そろそろ神様たちと決着つけようじゃない!」
サムが嘆きのヘルミーナを睨みつけた。
きっとヘルミーナの力なのだろうが、使徒や異形を戦わせるだけというやり方がサムには気に入らない。
ヘルミーナ自身が戦え、と心底思っている。
「サミュエル・シャイト。あなたは、この戦いで数多の命を奪いました」
「だからなんだ?」
「日比谷綾音の一撃で消し飛んだ私の作った使徒には、百を超える人間の魂が入っていました。もっとも、ぐちゃぐちゃにして一つにまとめてしまいましたが」
「悪趣味な奴だ。反吐が出る」
「ふふふ、自覚しています。ですが、あなたは罪のない魂を殺しました。それに関して何か思うことはありませんか?」
「――なにも」
サムは断言した。
命を奪ったことに関して何も思わない。
自分の命を守るため、仲間を守るため、家族を守るため、この世界を守るため、戦うことを決めている。
たとえ、相手が戦いを望んでいない人間が利用されていたとしても、決意は微塵も揺らがない。
「あら、あなたも私と変わらないのではありませんか?」
「舐めるな、下衆野郎が。あんたに利用し弄ばれた魂があるのなら、俺の殺しは救いだ。苦しみ続けるのなら、安らかに眠った方がいい」
「あらあら、偽善ですね」
「下衆よりもマシだ」
「そうですか。――では、もっとたくさんの命を弄んだ結晶を相手にしてくださいね」
ヘルミーナが嗤う。
すると、魔法陣がいくつも展開し、白い異形の少年少女が五人現れた。
「先ほどの試作品よりもずっとずっと強いのです。――楽しんでくださいね」
神とは思えに言動をするヘルミーナが笑みを深めると同時に、異形の少年少女がサムたちに襲いかかった。




