23「激情のランドルフは内心笑います」
(――なるほど、存外この世界にもそれなりに強い者がいるようだな)
激情のランドルフは、秘密裏に送った大半の「兵」が倒されたことを感じ取った。
自分たちを囮にすることで、最大戦力をこの場に集めたつもりだったが、思いのほか人間たちは馬鹿ではなかったようだ。
神を相手に、戦力を分散するのは不遜ではあるが、戦略としては賢い。
ただし、人間たちが神々に勝つことはできない。
(仮に我々を倒しても、戦神様がいる。もしかしたら――あの方が……いや、やめておこう)
ランドルフは思考を止めた。
自分が「あの方」に何かを感じ、思うのはあまりにも無礼であるのだから。
(さて、そろそろ潰しにかかろう。剣のウィーダルが倒されたことは予定外だったが、悪いことではない。マニオン・ラインバッハは天使であり、愛情と戦いの女神ヴァルレインから愛情を与えられた者だ。神に匹敵する力を持っていても不思議ではないが、ここまでとは思わなかった。――これだから戦いはやめられない!)
できることなら、ランドルフは後先を考えずにサミュエル・シャイトたちと戦いたかった。
だが、物事には順序がある。
今、ランドルフが動いてしまうのはよろしくないのだ。
嘆きのヘルミーナが「時間を稼ぐことができれば」、まだ戦える紅のグリムレンが命を賭けて戦うだろう。そして、最後にランドルフが戦う。
もしかすると全員が敗北する可能性もある。
――それはそれで楽しみだ。
激情のランドルフも戦いを司る神である。
戦いならば、勝利も、敗北も、すべて喜んで受け入れるのだ。
「神になって退屈だったが、今は久しぶりに心が躍る! さあ、サミュエル・シャイト。そして神々に歯向かう人間たちよ、楽しい戦いをしよう。忘れられない殺し合いをしよう!」
激情のランドルフは、早く自分が戦いたいと胸を高鳴らせるのだった。




