20「ゾーイと異形です」②
「――ふむ。こんなものか」
ゾーイは崩落した地下から無事に地上に戻ってくると、双剣を鞘に収めた。
キャサリンによって開けられた大穴は、ゾーイが通ると同時に閉ざされている。
白い異形は切り刻んだ上に、地下に置いてきた。
瓦礫に当たればダメージはあるだろうし、押し潰されたら致命傷にもなるはずだ。
ただし、完全に殺すことができたという確信はない。
初めて目にした化け物だ。すべてが未知数であるため、警戒を解くことはできない。
「ゾーイちゃん、どうだった?」
「斬り刻んで、瓦礫の雪崩を直撃していることも間違いない。魔王であっても、この質量に押しつぶされたらただではすまないだろう」
「でも、死んではいないのよね?」
「殺せたとは思っていない。だが、確実にダメージを与えることができたとは思っている」
キャサリンが苦い顔をした。
彼女も、異形を目にしているからこそ、殺せていないことが不安なのだろう。
「案ずることはない、キャサリン、ゾーイよ」
土埃を払うクライドだけが、余裕があった。
「案ずるなと言われてもねぇ。お姉さん的には、あれが一体だけとは限らない以上、確実に殺したいのだけどぉ」
「まったくもってその通りだ」
「むろん、私も同感である。ゆえに私も戦おう」
上着を脱ぎ、投げるとクライドは、無駄にポーズを取った。
「かわいい甥が神々と戦っているのだ。他の敵を我々が倒してしまうくらいしないといけないのである」
「……護衛対象が戦おうとするんじゃない!」
「ビンビンであるがゆえに」
「意味がわからん」
「はっはっは! ――来るのであるぞ?」
「――っ」
クライドが地面を指差すと同時に、大きな揺れが襲った。
双剣を抜き、ゾーイが身構える。
キャサリンがクライドを背に庇った。
揺れがどんどん大きくなり、地面が爆発した。
「――ちっ」
ゾーイが舌打ちするのに無理はなかった。
血まみれになりながら、異形は生きていた。
人の上半身は潰れ、竜の翼を失いっているが、あちらこちらを抉られた竜の下半身は形を保っている。
「……その状態で生きていることは褒めてやろう」
「あぁあああぁああぁあああああああああああああ!」
どこから絶叫が出ているのかわからないとゾーイが考えていると、異形の潰れた上半身の中から身体を引き裂きながら新たな人形が現れた。
それは、異形の肉体を全て脱ぎ捨ていると、自らの足で地面に立つ。
真っ白な肉体を隠さず露わにしているが、性器もなにもない。
ただ、目の前の人形が、本当に生物なのかゾーイは心底疑問に思った。




