19「ゾーイと異形です」①
「陛下っ、捕まってちょうだい!」
「うむ!」
キャサリンに抱きしめられたクライドが強固な結界を展開する。
「いつでも良いのである!」
「お姉さん、いくわよぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお! ――ぬうんっ!」
轟っ、と魔力を吹き出し魔法少女の衣装を翻しながら、結界で守られたキャサリンが岩盤や瓦礫を貫き地上を目指す。
すべては当初の予定通りだった。
クライドを狙ってくる者がいれば、どこまでも来るだろう。
面倒臭い場所にいることで、わずかな時間稼ぎと嫌がらせを行い、場所を崩壊させることで閉じ込めようとしたのだ。
無論、瓦礫に埋まったくらいで刺客が死んでくれるとは思っていない。
だが、ここにはゾーイ・ストックウェルがいる。
「さて、邪魔者がいなくなったのでこれからは我々の時間だ」
「いやぁ、お母さん! 助けて! 痛いのいやぁ! しねぇ、しねぇえ、しねぇえ!」
降り注ぐ瓦礫を見て人と竜の異形が動揺を見せた。
何度も視線を上に向け、逃げようとするも、ゾーイを警戒しできないでいる。
ゾーイは静かに双剣を構えた。
「お前がどの程度の生き物なのかわからないが、これだけの質量が降り注いでくれば魔王でもひとたまりもないだろう。だが、私は問題ない。なぜなら、すべて躱すことができるからだ」
「いやぁ、いやぁ、いやぁぁっ!」
「耳障りだな。声帯がまともに機能していないようだが、言いたいことがまったくわからん。まあいい、問答するつもりはない。貴様も戦うことができるのであれば、余計なことは言わず戦いで語るといい」
ゾーイの姿が消えた。
次の瞬間、異形の片翼が根本から断ち斬られ、落ちた。
血が流れ、絶叫が響く。
「想像していたよりもずっと柔らかいな。再生能力はあるようだが、条件は私も同じだ」
言葉の途中で、地面を蹴り跳躍する。
ゾーイのいた場所を、複数の触手が貫いた。
「いたいいたいいたいいたい」
「ふむ。早く鋭いな。触手で攻撃する理由がわからんな。知っているか? この世界が誇るラッキースケベ大魔王ならば触手はいやらしいことに利用するだろう。貴様もまだまだ甘いな」
山のような瓦礫が降り注いでくる。
「さあ、どちらが生き残るのか競おうじゃないか!」
ゾーイの姿が消える。
瓦礫を蹴りながら、目にも留まらぬ速度で移動しているのだ。
瓦礫の中を走り、跳び、異形を斬りつけていく。
サムのような絶対的な一撃はないが、正確に振るわれる双剣が首や腱、目、臓器、間接を的確に貫き、捻る。
異形はゾーイの攻撃だけではなく、瓦礫をも受けてしまう。
体格が良いため、機敏な動きはできず、避けることさえできなかった。
異形の絶叫は、瓦礫に飲まれて消された。




