18「白の異形です」③
「残念ですが、悲しげに母と呼ぶ声を聞いても心は痛みません」
さらに閃光が撃たれる。
異形の顔を、胸を腹を、手足を貫いていく。
つんざくような悲鳴が響く。
しかし、ジェーンの攻撃の手は緩まない。
「やめ、て、やめて、おか、あ、さん、やめ、いた、い、いたい」
目の前の化け物は、子供の形をとっているだけであり、中身は複数の人間が混ぜられた存在だ。
ジェーンの目には、化け物の中に子供が混ざっていないことが「視え」ている。
「抵抗しないことをお勧めします。痛みから逃れたいのであれば、死を受け入れなさい。あなたたちの死にたくないという想いが不必要な再生を繰り返しているのです。楽になりたいと願いなさい」
閃光で穴だらけになるも、すぐに再生していく異形に言い聞かせるように言葉を重ねる。
「あなたたちはすでに死者です。死を冒涜されているのです。悲しいことですが、死が唯一の解放です」
テラスを蹴り、大きく跳躍する。
異形の天使の側面に移動すると、大きく足を振るう。
どんっ、と大きな音と衝撃を生むと、異形が半分に砕けた。
「――再生できませんよ」
二分割にされた異形が叫びながら、再生を試みるも、ジェーンの言葉通り再生できない。
「再生できない程度に蹴りましたので、無理です」
ジェーンは指を構える。
ひとつまみの赤い光が生まれる。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
数がどんどん増えていく。
百が千となり万となった。
――ウォーカー伯爵家の上空が赤に染まった。
「あ、ああ、ああ、おかあさ」
ジェーンは異形の言葉を最後まで聞かなかった。
「――どうぞ安らかに」
万を超える閃光が、異形を貫き、砕き、破壊していく。
巻き込まれた異形たちも揃って崩れていく。
――一分ほど赤い雨が降り注ぐ。
雨が晴れると、もう異形たちのかけらも残っていなかった。
再生能力すら使わせずに、異形たちを完全に消滅させた。
「どうか安らかにお眠りください」
ジェーンが静かに黙祷し、異形たちとの戦いは終わった。




