17「白の異形です」②
クライド・アイル・スカイとゾーイ・ストックウェル、そしてキャサリン・ドミニク・ジョンストンが「白い異形」と接触した同時刻。
――五人の白い翼を生やした子供たちがウォーカー伯爵家の頭上にいた。
翼を生やした子供と聞くと天使を連想してしまうかもしれないが、実際の姿はあまりにもかけ離れている。
天使を模した彫刻に、牙が生え揃った耳元まで裂けた口と、その口から飛び出す二本の舌が意思を持ったように蠢いている。
口から溢れる唾液は、濁った赤で君が悪い。
「天使を模した異形」たちは、口から「ちりちりちりちりちりちり」と音を立てていた。
「――不愉快ですね」
ウォーカー伯爵家のテラスにひとりの女性が立っていた。
燕尾服に身を包んだ、男装の麗人。
魔王ダグラス・エイドの娘にして、魔王と同等以上の力を持つ準魔王――ジェーン・エイドだ。
少し癖のあるブロンドをショートカットに揃えた美女だ。
手袋をはめた手を目元に当て、空を見る。
異形の天使をはっきり確認していた。
「あれはなんなのでしょうね? 魔王フランベルジュが動かないのであれば神ではないのでしょう。ですが、見る限り使徒でもなさそうですね」
ジェーンには、異形たちがロイグ・アイル・スカイのような使徒とはまったく別物であると理解できていた。
「神でもなく、使徒でもなく、よくわからないあなたたちは何者ですか?」
声を大きくして尋ねてみるが、返事はない。
しかし、異形たちの顔がジェーンに向く。
「声は聞こえているみたいですが、返事はできないのか、してくれないのか、どちらなのでしょうね?」
じぃっと見てくる目は、確実にジェーンを認識している。
探っているのか、それとも何か別の理由があるのか、わからない。
「聞こえているようなので、一度だけ忠告をしておきましょう。ここから去りなさい。あなたたちはなのもできないのですから、創造主の元に戻りなさい。最後通告ですよ」
異形たちからはやはり返事はなかった。
代わりに、大きく翼が広げられた。
「――残念です」
ジェーンは静かに魔力を高めた。
様子見をするために高めた魔力だけで、魔王に匹敵している。
「一応名乗っておきましょう。私はジェーン・エイド。準魔王にして、サミュエル・シャイト様にこの屋敷の守護を任された者です」
名乗りと同時に、ジェーンの指から赤い閃光が走った。
閃光は一体の異形の額を撃ち抜いた。
「あ、ああ、あ、あ……おか、あ、さん」
額から血を流しながら、少女の姿をした異形がジェーンを睨んだ。




