15「クライドとゾーイです」③
「私よぉん! ささ、クッキーとお茶をどうぞぉ」
「うむ。いただくのである」
「……いただきます」
「どうぞぉ、どうぞぉ」
キャサリンは、ゾーイたちが座っている階段部分にハンカチを敷きお茶の支度をしてくれた。
クッキーを齧りながら、ゾーイは唸る。
「サムたちが神々と戦っているのに、私たちはこんなのんびりしていてもいいのだろうか?」
「あらぁ、ゾーイちゃんったら。これも大事なことよ。陛下は世界の楔なんだし、ここに敵がこないことが一番でしょう?」
「わかってはいるんだが、今まで全線で戦ってきた身としてはじっとしているのが難しいんだ。もちろん、サムたちを信じていないわけじゃないんだが」
「それはお姉さんだって同じよぉ。できることならお姉さんだって前線で戦いたかったわぁ」
キャサリンもスカイ王国が誇る宮廷魔法少女だ。
前線に立てないことに思うことはあるのだろう。
「サムちゃんやウルちゃんたちになんでも任せてしまうというのもお姉さん感心しないのよねぇ。最も、そんなふたりに頼らなきゃいけないことも嘆かわしいのだけど」
「それは、そう、だな」
ゾーイは肩をすくめた。
「仕方がない。不本意だが、全力でこのびんびん陛下を守るとするか」
「それこそゾーイちゃんだわ! 陛下とコンビ組ませたらスカイ王国一と名高いだけあるわねぇ!」
「ちょっと待って! そんな不明ようなことを言われているのか!? 訴えるぞ!?」
「酷いのである!」
女性たちのやりとりをにこやかに見守っていたクライドだったが、さすがに抗議の声を上げた。
――その時、この場に風が吹いた。
「――っ、なんだ!」
ゾーイが身構える。
この場所は、レプシー・ダニエルズの封印の場所であると同時に、サミュエル・シャイトの「世界を斬り裂く者」によっ半壊した場所でもある。
奇跡的に残った空間を利用して、クライドを保護する場所とし補強してあるのだ。
この場は、完全に瓦礫に覆われており、「転移」を使わなければ行き来ができない。
その役割は、カルミナ・イーラが務めている。
そんな場所に、大きな風が吹くことはまずありえなかった。
音がする。ず、ずず、ず、と重い何かを引きずる音だ。
それもありえない。
この場に、ゾーイたち三人以外はいないはずだ。
ゾーイたちの警戒が続く中、「それ」はゆっくりと影から現れた。
蠢く触手を身に纏った、竜のような人のような、歪な化け物がいた。
「それ」はゾーイたちを認識すると、
「きぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
この場を揺らさんと甲高い声を上げたのだった。




