11「嘆きのヘルミーナが嗤います」②
すべてが真っ白な少年だった。
瞳も濁ったような白に染まっている。
身につけている衣類も、真っ白なズボンとシャツだけ。
一見すると、不気味な少年といった感じだが、この場にいる誰もが少年の身に秘める魔力量に絶句していた。
規格外の魔力を持つサムやウルよりも倍以上ある。
これにはサムは顔を引き攣らせるしかない。
少年には視力があるようで、きょろきょろと周囲を窺っている。
そして、嘆きのヘルミーナを見た。
「うぅー」
「そういえば、あなたの名前がありませんでしたね。呼ぶのが不便なので、ココリョナと呼びましょう。さあ、ココリョナよ、神に歯向かう愚か者に嘆きの鉄槌を与えなさい」
「あぁーー」
ココリョナは言葉が喋られないようで、唸ることで返事をしていた。
「うー、あーー。ああぁあああああああああああああああああああっ!」
少年の叫びと共に、魔力が解き放たれた。
魔力から生まれた衝撃派によってサムたちが、吹き飛ばされてしまう。
「さ、さすがにびっくり。魔力量が違いすぎるでしょう」
「同感です、サム。あまり不用意に攻撃するのはよくありません。少しずつ、様子を見るのが最適でしょう」
サムとカリアンがうまく地面に着地すると、白い少年ココリョナを睨む。
が、いなかった。
「――いや、マジか」
「っ、どこに」
ココリョナを見失ったサムとカリアン。
あれほどの魔力量を持つ対象を見失うことなどそうそうあり得ない。
「サム! 上だ!」
ウルの叫びに、カリアンと共に頭上を見上げた。
そこには大きく跳躍したココリョナの姿があった。
だが、頭上にいる少年からは魔力を全く感じない。
サムたちも魔力を限界まで抑えることはできる。普段、不用意に魔力を表に出せば、魔力に耐性のない人間にいらぬ圧をかけてしまうことがあるので、抑えているが、ココリョナのようにまるで感じないとまで抑えることができない。
「全てを斬り裂く――」
まっすぐに落ちてくるのなら、迎え撃てばいい。
サムはココリョナを斬り殺そうとするが、できなかった。
ココリョナが消えたのだ。
また見失ってしまったのだ。
即座に感覚を広げると、背後にいた。
「あぁああああああああああああああああ!」
振り返ったと同時に、サムを殴り飛ばした。
だが、サムもただやられたわけではない。
サムを殴ったココリョナの腕を斬り落としていた。
地面を転がっていくサムは、拳を地面に突き立てて衝撃を殺し、なんとか体勢を取り戻す。
「――づぅ、骨、折れているんですけど」
殴られた肩が折れていた。
すぐにヒールを施し回復に努める。
対して、片腕を斬り落とされたココリョナは落ちた腕を拾い、にぃっと嗤うと、サムに向かって己の腕を全力で投げた。




