10「嘆きのヘルミーナが嗤います」①
中指を立てたカリアンに、光の剣で貫かれた嘆きのヘルミーナが嗤う。
「残念です、とても残念でもありません。我々が、戦神様が欲した人材はすべて神になることも使徒になることも断ってしまう。私にはわからない。人を超えた力を超えることができるというのになぜあなたたちは拒むのですか? ――実に嘆かわしい」
「参考までに私以外に誰をスカウトしたのか教えてくれませんか?」
ヘルミーナは腹部に刺さった光の剣を握り砕き、小さな口で歌うように言葉を吐く。
「戦神様がお気に入りだったのは、カリウス・ラインバッハです。剣の技量だけならば剣聖になるべき人間でしたが、本人は権力や地位に執着していた哀れな人物です。使徒として時間を掛けることで素晴らしい剣士になるはずでしたが、血も繋がっていないサミュエル・シャイトと戦うのであれば断ると言いました。嘆かわしい。父親とも思われていないのに」
「…………」
サムはカリウスが使徒になる誘いを断ったことを知っており、カリアンも聞いていた。
カリアンの娘と結婚しながら、幸せにできなかった男に父親として思うことは山のようにある。
あるが、最後の最後でサムと親子の絆を結んだこと、サムのために使徒の誘いを蹴ったことを知り、娘の夫としては認めていないがサムの父親としては認めている。
「他にも、古い時代の剣士、魔法使いにも声を掛けたのですが、すべて断れました。そうそう、あなたの奥様にもお声をかけたのですよ?」
「断られたのでしょうね。彼女はあなたがたの誘いに応じるほど愚かではない」
「いえ、愚かです。我々の誘いを、神の言葉を否定したのです。使わせた神を斬り殺した。実に忌々しい、鋼の一族です」
はぁ、ヘルミーナは大袈裟に嘆息した。
「嘆かわしいことに、神の誘いの応じたのは誰も彼も三下の雑魚ばかり。なので、使徒になりたいと願った人間を集め、ひとつにしてみました」
「……なにを?」
カリアンは言葉の意味を理解できなかった。
否、理解したくなかった。
嘆きのヘルミーナは嗤う。
お世辞にも、その表情は神とは言えなかった。
「人間たちを集め、ぐちゃぐちゃにしてからひとつにまとめたのです。見てくれは普通の人間ですが、中身はただの異形です」
魔法陣が三度光る。
魔法陣の中から現れたのは、全身が真っ白な十歳ほどの子供だった。




