6「カリアンの疑問です」①
「――――ふう」
カリアン・ショーンは、熱い吐息を吐き出した。
想像以上に身体が熱くなっている。
今の自分に普段の冷静さはないとわかっていた。
妻の仇を前に、冷静でいられなかった。
若かりしころの口調を感情に任せて吐き出してしまったことに羞恥を覚える。
それでも、後悔はない。
仇であるアルフレッド・ポーンだけではなく、もう大切な家族を失わないために強くなると決めた。
最愛の妻の「技」を模倣したカリアンの最強の技は、聖力を得たことで使用不可能になっていた。
しかし、聖力でも使えるようにしたが、出力が落ちた。
やはり、人間に聖力は持て余してしまうのだと理解した。
同時に、疑問もできた。
「一度は復讐として、二度は仇として、憎き男を二度も殺せて――溜飲が下がりました」
やり切ったという感情がある。
だが、心は晴れない。
アルフレッドを殺しても妻は蘇らないのだ。
「おじいちゃん!」
「サム」
「すごかったよ! なにあれ、「闇夜を斬り割く者」って!? 世界が真っ暗になったんですけど!?」
「ははは、私にとって一番の攻撃です。そうですね、いずれサムに授けましょう」
「いいの!?」
きらきらと瞳を煌めかせる孫を見ていると、カリアンに冷静さが戻って来る。
妻を失い、一度は娘も失った。
我が子のように育てた子も失ってきた。
それでも、今、子供たちを救えた。
元凶が作り上げた歪んだ国は崩壊に向かっている。
子供たちと善人たちは脱出し、崩壊に巻き込まれることはない。
――アルフレッド・ポーンが残したものはすべて時間がかかるがすべてなくなるだろう。
カリアンはサムの頭を撫でると、静かにこちらを眺めている嘆きのヘルミートに視線を向ける。
「さて、これで終わりですか?」
「いいえ、まだ駒は用意してあります」
「ふむ。正直、時間の無駄ではないかと思うんですが?」
「ふふふっ、そう思いますか? 私は思いません。あなたたちは万全な状態で戦いを続けたいはずですが、因縁がある相手を前につい力を使いすぎてしまう。消耗した状態で神と戦えるとは思わないことです」
「神の割には、ちまちまとしていますねぇ」
「あなたたちが力を温存したいように、私たちも力の温存をしたいのですよ。あなたたちを殺し、世界の楔を破壊します。しかし、世界の楔は見つければ簡単に破壊できるわけではないのです。下手をすれば、破壊の反動で我々も死ぬでしょう」
「そこまでして、戦神に尽くすのですね」
「ええ、尽くします。きっと説明しても、この感情はわからないでしょう」
カリアンが肩をすくめた。
きっとこれ以上言葉を重ねても意味がないと判断した。
ならば、とアルフレッドの戦いの中で生まれた疑問をぶつけることにした。
「――参考までに教えていただきたいのですが、我々が授かった「聖力」とはどういうものなのでしょうか?




