4「因縁の決着です」①
細切れになった肉塊が「ぐちゃぐちゃ」と音を立ててくっ付いていく。
カリアンの耳に不快な肉と肉が重なる水音が届く。
普段から冷静なカリアンでさえ、顔を顰めてしまう。
「悍ましい……果たしてこれを再生と呼べるのか悩みます」
「……かりあ、ん……貴様、よくも、ぼく、を」
肉塊から再生中でも声が出るようだ。
神の使徒というが、カリアンにはアルフレッドが「化け物」に見えた。
「そろそろ決着をつけましょう」
「待て、待て! 僕がまだ再生していない! 待て!」
「あなたは阿呆ですか? なぜ私が敵の回復を律儀に待たなければならないのでしょうか?」
「――カリアン・ショーン、貴様はいつもそうやって! いつも僕の邪魔をしているな! お前の妻も聖女だから使いようがあったが、お前への意趣返しに僕の寿命を伸ばすために殺してやったんだ! はははは!」
「そうでしたか。――よかった」
「は?」
「あれほど信仰が深かった彼女を犠牲にして女神の封印が解けないことがとても疑問でした。実際は、女神の封印は物理でどうにかなったようですが、それでも納得できなかった。ですが、そうですか。――アルフレッド、貴様が彼女を殺しただけだった!」
カリアンの雰囲気が変わった。
温厚な表情が消えた。
いつも穏やかな瞳は剣呑となった。
カリアンが抱えている感情がすべて顔に出ていた。
怒りだけではない。
もっと負の感情が渦巻いていた。
サムたちは、こんなカリアンを初めて見た。そして、悲しんだ。愛しい人を奪われただけではなく、意味のないことにその命を使われたのだ。
カリアンの怒りは、正当なものだった。
「貴様が自殺願望があることはよくわかった。私を、いや、俺に妻への侮辱をして何をしたかったんだ?」
カリアンの手に光が集まった。
世界が少し暗くなった。
「俺が動揺するとでも思ったか? 泣くとでも思ったか? ふざけるな。貴様は俺の怒りに火をつけた。もう冷静じゃいられない!」
カリアンの手のひらの中に、さらなる光が集まっていく。
世界がまた暗くなった。
「そんなに死に急ぐのなら今すぐ殺してやる。喜んでいいぞ、アルフレッド・ポーン! 今から貴様を殺す魔法は、最愛の妻が一緒に考えてくれた俺の絶対の魔法だ!」
カリアンの手に神々しい光の剣が握られていた。
光の剣にさらに光が収束され、一筋の光となった。
もう剣の形をしていない。
ただ、一筋の光が、眩い光が、カリアンの手に握られていた。
「やめ」
世界から光が消えた。
カリアンだけが光を放っていた。
「――闇夜を斬り裂く者」
妻の十八番と自身の得意とする光属性の魔法を合わせた、カリアン・ショーンの「必殺技」が肉塊から回復しつつあるかろうじて人の方を取ったアルフレッド・ポーンの肉体を斬り、消し飛ばした。




