3「因縁のふたりです」③
アルフレッドは死ななかった。
それでも痛みはあるようで、胸と口から血を流しながら、苦悶に呻いている。
「口ばかりですね、アルフレッド・ポーン」
「…………カリアン、貴様、よくも」
「あなたは弱者を相手にしていたが、力はあった。強かった。神になってそれ以上の力を得たのでしょう。実際、今のあなたから凄まじい力を感じます」
「そうだ! 僕は神に選ばれた! 紛い物の神ではなく、本物の神に選ばれたのだ! 僕の力を、本当の力を見せてやろう!」
「しかし、何も恐ろしくない」
「――は? なにを」
カリアンが拳と蹴りを繰り出す。
アルフレッドの身体の様々な場所から骨の折れる音がする。
五十を超える乱打を当てたカリアンが、手を止めた。
「おや、流石に再生能力というものは面倒ですね。今のあたまの力から察するに、打撃や細かな攻撃で殺すことはできないようです」
「そうだ! カリアン! 貴様は」
言葉の途中で、拳を顔に叩き込まれ歯が折れたアルフレッドは強制的に沈黙させられた。
口を押さえて、呻くことさえ許されない。
膝をつき、情けなく痛みに涙を流す姿は、とても力を持つ者とは思えなかった。
「できることなら殴り殺したかったのですが……神々の前座に時間をかけるのもよろしくないでしょうから、少し派手な技で殺させてもらいましょう。年甲斐もなく派手なことをするのは好ましくないのですが……」
「カリアぁあああああああああああああああああああああン! 貴様ぁああああああああああああああああああ!」
再生能力を使い、怪我と痛みを消したアルフレッドが憎悪を込めてカリアンを睨み、名を叫んだ。
やれやれ、とカリアンは肩をすくめる。
「あなたは先ほどからずっと怒鳴っているだけですね」
「そう思うのなら、僕の力を食らうといい。僕に与えられたこの力――ダークネルフ……え?」
闇の力を使おうと両腕を高く上げたアルフレッドが変な声を出した。
彼の顔や肩に、暖かな液体がかかる。
アルフレッドが目を動かし、己の頭上を見た。
「うわぁあああああああああああああああああああああああっ! 僕の、僕の腕がぁああああああああああああああああああああああああ!」
アルフレッドが掲げた腕の肘から腕が斬り落とされていた。
「おのれっ、おのれ、おのれおのれおのれおのれ、カリアンんんんんんんんんんんんんん! 何をしたぁあああああああああああああああああああ!」
血の混ざった唾を飛ばすアルフレッドの首が飛んだ。
続いて、腕が付け根から斬り落とされ、胴体が縦と横に四分割され、足も、付け根と膝、足首と両断された。
為す術もなく攻撃を受けたアルフレッドは崩れ落ち、その身を己が血溜まりに沈める。
「そうそう、言い忘れていましたが、あなたから授かった聖力はもうありません。不愉快な力だったので、放棄し、魔力を取り戻しました。知っていますか? スカイ王国ではおいそれと聖力などと口にすると、とてつもない誤解を受けるんですよ?」




