107「サムとアルバートです」④
「あのくらいじゃ、俺は死なないぜ!」
全裸に透明な粘液に塗れたアルバートが犬歯を剥き出しにしてサムに向かい炎を放った。
大した炎ではない。
サムは軽く手を振り、炎を斬り飛ばした。
「神の力をもらったと言ったが、言うほど大したことはない。単純に、神力という人間を超えた力から放たれる高火力、そして死なない肉体だ。無論、絶対死なないわけじゃないんだが、少なくとも俺は死ぬ気はねえ」
「そりゃそうかい! とりあえず、服着ろよ!」
「…………おっと、すまん。いや、お前の攻撃のせいで服がダメになったんだがな。そういえば、お前はアイテムボックスを持っていたな。服とかないのか?」
「あるけど」
サムはアイテムボックスに手を突っ込んで、スラックスとシャツを取り出し投げた。
受け取ったアルバートは「悪いな」と一言言って、着替える。
「悪い悪い、戦いに水を差すつもりじゃないんだが、まさか俺も全裸になっているとは思わなかったぜ。スカイ王国の変態どもとは違い、俺は感覚は普通だからな」
「自称普通が一番厄介なんだよなぁ」
「そう言うなよ」
会話しながら、サムとアルバートは間合いの中でお互いを探り合っている。
どのタイミングで絶対的な攻撃をするのか、最高の攻撃のタイミングを伺っているのだ。
「やっぱやめた」
「なんだ?」
「綺麗な戦いをするつもりはない。今から、泥臭く戦おうぜ、アルバート・フレイジュ!」
「いいねぇ! 今の俺には、泥臭い方が好ましいぜ! こいっ、サミュエル・シャイト!」
サムはアルバートに飛び掛かる。
拳をアルバートの顔を叩き込み、地面に押し倒す。
馬乗りになって全力で拳を叩き込もうとする。
だが、アルバートの蹴りがサムの腹部に刺さり、動きが鈍くなる。
吐血はしなかったが、空気が口から飛び出る。胃液の味が、口に広がった。
アルバートに馬乗りになられ、顔を、頭を、喉を、何度も殴られる。
サムも、負けるものかとアルバートの顔に拳を何度も叩き入れた。
「ははっ」
「はははっ!」
血飛沫を散らしながら、サムもアルバートも笑う。
サムの鼻が折れ、血が飛ぶ。
目元が腫れ、視界が狭くなった。
それでも、サムは拳を止めない。
アルバートの脇腹を何度も殴る。
骨が砕ける感覚が伝わるが、手は止めない。
すると、アルバートの口から血が溢れた。
サムの拳が確実に内蔵にダメージを与えているのだとわかる。
サムは回復魔法を使う暇もなく、アルバートは再生能力を発動する暇もなく、攻撃にだけ専念していた。
「楽しいなぁ、サミュエル!」
「俺は痛いよ、アルバート!」
サムとアルバートは魔力も魔法も何も使うことなく、一心不乱に己の拳で相手を倒そうと殴り続けた。




