106「サムとアルバートです」③
アルバートの肉体が細切れになり、地面に崩れ落ちた。
トマトが潰れたような音が響き、地面が真っ赤に染まる。
赤は地面に吸収され、血溜まりを作りながらゆっくりと広がっていく。
「――痛えじゃねえか!」
肉塊から怒りを宿した声がした。
「再生能力があっても痛みはあるんだ! 俺のことを挽肉にしやがって!」
間違いなくアルバートの声だった。
これにはサムも引く。
「身体中をバラバラにされても生きているとか……再生能力はそこまで万能じゃないでしょ」
再生能力以前の問題だ。
例外はもちろんあるが、首を刎ねられ、脳を破壊され、心臓を潰されるなどすれば再生能力があっても死ぬ。
サムは、アルバートの再生能力が高いと見越して、身体中をすべて斬ったのだ。
どこに攻撃するれば正解なのかわからなかったので、手当たり次第斬ってみたのだ。
――だが、まさか、すべて不正解であるとは思わなかった。
しかし、サムはすぐに切り替える。
元女神にして元勇者である日比谷綾音は首を刎ねても死ななかった。
だが、強力な魔法によって消滅しかかったこともある。
つまり、どれだけ優れた再生能力を持っていても、圧倒的な質量で押し潰せば殺せるのだ。
「俺自身も再生能力はもらってからまともに使ったことがないからなんとも言えないが、痛みが伴うなら便利とは言わねえな。俺じゃなければ、痛みで精神がおかしくなっているぜ?」
アルバートの肉塊に火がついた。
ゆっくりと火は広がり、最後にはすべての肉が燃えた。
炎を纏った肉塊から、勢いよく腕が飛び出てきた。
もう一本腕が現れ、次に首が出てくる。
まるで脱皮するかのように、アルバート・フレイジュは己の肉塊から這い出てきた。




