101「ようやく思い出しました」②
アルバート・フレイジュは、かつてスカイ王国の宮廷魔法使いにしてスカイ王国最強の魔法使いであった。
当時、スカイ王国最強だった宮廷魔法使いデライト・シナトラを見事倒し、最強の座を手に入れたのだ。
――だが、その最強の座は仮初のものだった。
その理由は、アルバートが純粋に己の魔法のみでデライトを倒したわけではないからだ。
魔導具を使い、力を倍増したことで、最強の座を手に入れたのだ。
しかし、アルバートは悪いことをしたとは微塵も思っていない。
道具は使うものだ。
剣士が剣を使うように、魔法使いだって自らの力を高める道具を使うことは当たり前だと思っている。
相手が使わなかったのは、相手の自由だ。
そもそも最強を決める戦いに、魔道具を使っていけないというルールはないのだから。
ただし、アルバートはプライドの高い人間であったため、魔道具を使っていることを徹底的に隠した。
その甲斐あって、アルバートは数年の間、スカイ王国最強の魔法使いとして君臨していた。
彼にとって、幸いだったのは、本来ならば最強の魔法使いとして魔道具を使ったアルバートよりも桁違いに強いウルリーケに興味を持たれなかったことだ。
わずかでも興味があったのならば、ウルはアルバートと戦っていただろう。
その結果は、想像するに容易い。
そして、ウルは病に冒されたことで人知れず失踪し、デライトは酒に溺れて再起することはなかった。
もうひとり厄介であるはずのギュンター・イグナーツはウルが失踪したことで言動がさらにおかしくなり、不可思議な儀式や、ご祈祷、果てには関係ない雨乞いなどをしては、宮廷魔法使いとして各地に派遣され八つ当たりのように暴れていたので、やはりアルバートと関わりがなかった。
アルバート・フレイジュが唯一ミスをしたと言えば、魔道具を使って最強の座を得たあとに己を鍛えなかったことだ。
魔導具込みでもよかったのだ。
魔法使いとして、底上げをするべきだった。
しかし、アルバートは数年の間、何もしなかった。
いつか自分よりも強い者が現れるなど微塵も考えずに。
そして、サミュエル・シャイトが現れた。
魔導具も魔法も使わせてもらえなかった。
ただ、サムが腕を横に薙いだだけ。
たったそれだけで、アルバートは横に両断されて死んだ。
亡骸は灰となって残りもしなかった。
そんなアルバートに、神が手を差し伸べた。
使徒になれ。力を与えよう。
ありきたりな、しかし甘美な誘いだった。
アルバートは何も考えずに、受け入れた。
神などどうでもいい。
世界がどうこうという話にも興味がない。
アルバート・フレイジュは、サミュエル・シャイトと戦いたい。
それだけだった。
――だが、まさか顔も名前も完全に忘れられているとは思わなかった。




