100「ようやく思い出しました」①
「お前……マジで言っているのか? 俺が嫌いだから、傷つけるために俺を忘れたなんて嘘をついて傷つけようとしているんだろう?」
「本当に、存じ上げません!」
「…………ありえねえだろ。まだ、一年だぞ? スカイ王国にひょっこり現れたお前が、最初に公の場で戦ったのが俺じゃねえか? その俺を忘れる? さすがに、脳に何か問題があるんじゃないかって心配になるんだが」
「……公の場で、初めて戦った?」
サムは首を傾げた。
頑張って記憶を遡ってみる。
スカイ王国王都に初めて足を踏み入れたのは、まだ春になったばかりの頃だった。
病で亡くなってしまったウルの亡骸を、生家のウォーカー伯爵家に届けるためにやってきたのだ。
ウォーカー伯爵家のみんなはとてもよくしてくれた。
特に、次女リーゼは親身になって接してくれて、サムをひとりにしないでくれた。
その優しさに、大切な人を失ったばかりのサムがどれだけ救われたことか。
リーゼの剣捌きは一流の剣士のそれであり、魔法を使わなければ叩きのめされてしまったことが懐かしい。
四女のエリカとは最初はぎくしゃくしたが、良い関係を気づけた。
次に、ギュンター・イグナーツと出会った。
ウルの婚約者を自称し、弟子であるサムを見極めんと挑んできた。
戦いに勝利してしまったせいで、現在に至るまで憑かれているが、なんだかんだと今は友人だ。
そして、灼熱竜が王都に襲来し、全力で戦うことになった。
さすが竜というべきか、強かった。
まだ肉体的にも魔力的にも成長過程であったサムは大きく苦戦することになる。
だが、彼女は王都を襲撃したかったのではなく、スカイ王国の貴族に囚われてしまった子供を助けにきたのだ。
サムとギュンターは灼熱竜に協力し、子竜三姉妹を無事に救出した。
そんな子竜たちがウォーカー伯爵家に住むようになり、今では人の姿になれるまで成長したことは感慨深い。
「ごめん、やっぱり記憶にないや」
「抜けてる! 俺の記憶が抜けてる! お前の頭はへちまか!? すっかすかじゃねえか!」
「そう言われても……スカイ王国で生活を始めてから今日に至るまで、どれだけの出来事があったと思っているんだ!」
「俺に言われてもなぁ。そうじゃなくて! ギュンター・イグナーツと戦ってから、竜と戦う間に、ほら、あっただろう!」
「…………えっと、うーん、そういえば」
「頑張れ! 思い出せ! お前ならできる!」
なぜか男に応援されながら、記憶を手繰ることになった。
実に不思議だ。
「ああ! デライトさんとフランさんと出会ったのはこの時だったなぁ。デライトさんは酒浸りで、今じゃすっかりイケオジになってレイチェル様と結婚してラブラブだし」
「あのおっさん王女と結婚したのか!? すげえな! 年齢差、やばくねえ!? いや、驚きもあるけど、そこまで思い出したのなら俺のことも思い出せるだろう?」
「えっと」
「ほら! 当時宮廷魔法使いで、スカイ王国最強で!」
「うーん」
「フランチェスカに粉かけていたイケメンがいただろう!?」
「――――――――あ」
「おっ! 思い出してくれたか!? 俺だよ! フランチェスカに無理やり結婚迫って、デライトのおっさんから最強の座を奪って、竜の子供を攫う手伝いをした、アルバート・フレイジュだよ!」
サムは思い出した。
そういえば、そんな奴がいた。
「お前に真っ二つに瞬殺された、アルバート・フレイジュだよ!」
「あー、はいはい! いた! いたよ! いたね! うわぁ、久しぶり! 懐かしいなぁ!」
サムはアルバートに歩み寄ると、肩をパンパン叩いた。
「いやぁ、懐かしいというか、本当に久しぶりだね」
「よかった、思い出してくれたか」
「思い出したよ。頑張って思い出したよ。――――って、てめえは何の面下げて復活しやがった!」
サムは全力でアルバートの顔面に拳を叩き込んだ。
シリアス先輩「し・り・あ・ちゅっ!」
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