89「マニオンと剣のウィーダルです」③
「――やったか!」
マニオンの一振りが綺麗にウィーダルを両断した光景に、サムが叫んだ。
しかし、すぐにウィーダルの肉体が再生し、繋がった。
「……サム、お前が余計なことを言うから」
「なーんでフラグ建てるかな」
「俺のせいなの!?」
ウルと綾音に睨まれたサムがしゅんとしてしまう。
その間にも、戦いは続く。
マニオンはウィーダルを殺せなかったことを気にせず、神剣を何度も振るう。
白銀の軌跡を描き、ウィーダルの喉を斬り裂き、胸を貫き、内臓をえぐり、首を跳ね飛ばした。
しかし、ウィーダルは死ななかった。
まるでさもないことのように肉体が再生され、平然としている。
「…………察するに、消し飛ばさないといけないということか」
埒が明かないと判断したマニオンが、ウィーダルの剣から手を離し、一度距離を取った。
ウィーダルはマニオンにくつくつと笑う。
自分が勝者であると疑っていない、自信に満ちた顔だった。
「残念だな、マニオン・ラインバッハ。俺を消し飛ばしても、貴様に勝ち目はない」
「――なるほど」
消し飛ばして殺されない自信があるから余裕なのか、それとも余裕を演じているだけなのかマニオンには判断できず、再び肉薄すると人体の急所と呼べる場所を次々と斬り、貫いていく。
相手は神だが、元人間である以上致命傷となるべきところは同じだ。
ただ、神には再生能力が備わっているということが、大きな違いとしてある。
それはマニオンも同じだが、首を刎ねられても死なない自信はない。
(おそらく、剣のウィーダルには絶対的な何かがあるはずですが、さて何がその自信につながるのやら。不死性はないはずです。神は不死じゃない。それは創造神も同じであり、いずれは死ぬ。実際、世界の意思によって彼らは死にかけていた)
手足を細切れにし、首を刎ね、頭部を潰した。
股間を蹴り潰し、内臓を神剣で掻き回しもした。
それでも、死なない。
ダメージはあるようだ。
痛みに呻くし、血も流すし、吐き出す。
彼の足元は、彼の血の水溜りができている。
「くそがっ、俺にも痛みはあるんだぞ!」
剣を重ねてわかったが、剣のウィーダルに名前負けをするくらい弱い。
特別剣術に秀でている神ではないとマニオンは判断した。
無論、神であり、功績を残した者だ、それなりの実力を持っていのだろうが、先ほどウルと戦った紅のグリムレンの方が格上に思えた。
しかし、マニオンの目には四人は対等に見える。
(剣で何かを成し遂げた人物だったことは間違いないはずですが、剣術に秀でているわけではないのか? 僕が偉そうなことを言えないが、単純に剣なら僕の方が上だと思えてしまった。だが、殺せない。なんて面倒なんだ。これだから、神はずるい)
何か、殺すために手段が必要なのか、それともマニオンの攻撃に何かが足りていないのか。
「――おや?」
マニオンは何かを思い出したように呟いた。
「うん、試してみましょう。僕の違和感が正しければ、剣のウィーダルは面倒臭いだけの神だ。――では、神剣ストフォルテ。もうしばらく僕に付き合ってください」
抱いた疑問を確かめるべく、神剣を握りしめマニオンはウィーダルに向かい地面を蹴った。




