88「マニオンと剣のウィーダルです」②
マニオンとウィーダルの戦いを眺めていたウルがぽつりとつぶやく。
「……私は剣に特別秀でているわけではないんだが……マニオン・ラインバッハ、かなりできるな。剣のウィーダルは神剣があってこそマニオンが強いと考えているようだが、違うことくらい見ればわかるだろうが」
「だね。マニオンの動きは、我武者羅に努力を続けた人の動きだもんね」
「まったくだ。人の弟をそんな安易に力を手に入れただけとか、失礼極まりないな」
「はっ、不仲だった兄弟が今は仲がいいことで何よりだ。ところで、マニオンの今の一撃、見えたか?」
「…………ぶっちゃけギリギリ見えたくらい」
「サム……いずれ戦うんだ、ちゃんと見ておけ。ついでだから神々を練習台にでもしておけ。私の見立てが確かなら、マニオン・ラインバッハは剣のウィーダルよりかなり強いぞ」
ウルは楽しそうに笑った。
■
剣のウィダールは震えていた。
恐怖などではない。
――純粋な怒りで、これでもかと身体を震わせていたのだ。
「マニオン・ラインバッハ、どうやら貴様は勘違いをしている」
ウィーダルの肉体の傷が消えていく。
「愛情と戦いの女神ヴァルレインに使徒に選ばれ、力を与えられ、あまつさえ神剣までもらったことで、貴様は自分が強者であると勘違いをしている。責めるつもりはない。与えられたものでも力は力だ。強く振る舞うことはできる。だが、驕るな。貴様が強くなったわけではない。貴様はただ、強い力を振るっているだけにすぎない」
「……何が言いたいのかわからないな。会話をするつもりがないのなら、黙って剣を構えろ」
「貴様はあくまでもヴァルレインの力を借りて使っているだけの弱者だ! そのような紛い物が、まるで自分が強者であると言わんばかりの顔をするな――あまりにも不愉快だ!」
ウィーダルの姿が消えた。
瞬く間にマニオンに肉薄し、剣を下から上に斬り上げた。
マニオンは冷静に対応する。
神剣で受けた。――――が、腕を、首を、頬を、額に切創が生まれて鮮血が舞った。
「くはっ、くはははははは! やはり貴様程度では俺の剣を押さえ込むことはできない! 俺の神剣神喰らいは斬った相手から力を奪い、吸収する能力を持つものだ! わかるか? 貴様が神剣を持とうと、斬り合う度に貴様は疲弊し、俺は力を得る。戦えば戦うほど、俺の力は増していくんだ!」
「――――なんてつまらない力なんだ」
「な、に?」
マニオンは何の躊躇いもなくウィーダルの剣を掴んだ。
手から血が流れると、まるで意思をもったように神剣神喰らいが血を飲むように吸収していく。
「そんなに力が欲しいならくれてやる。剣の神を名乗りながら、なんてつまらない戦いをするんだ! なぜ、一撃で倒そうとしない!」
「黙れっ、手を離せ!」
「――神剣ストフォルテよ、ヴァルレイン様からいただいた神剣をこのようなつまならない戦いに使うことを謝罪する。しばし我慢をしてほしい」
マニオンが掴んだウィーダルの剣はぴくりとも動かない。
ウィーダルは焦ったように力を入れるが、膂力はマニオンの方が上だった。
「剣を離さないのは剣士の意地か、それとも武器がなければ戦えない臆病者なのか」
マニオンは、神剣ストフォルテを強く握りしめ、横薙ぎ振るった。
――ウィーダルの肉体は横に両断された。




