84「マニオンが来てくれました」②
マニオン・ラインバッハが現れると、睨み合っていた友也とランドルフを含め誰もが彼に視線を向けた。
「よ、マニオン。来てくれてありがとう」
「いえ、遅くなりました。遅刻分は、神を殺すということでチャラにしてください」
「いやー、助かるよ」
サムが軽く手を挙げると、マニオンも手を挙げて返す。
「ふ、ふははははははっ! ヴァルレインの使徒が我々と敵対すると言うのか!」
「――気安くヴァルレイン様のお名前を呼ぶな」
神が盛大に笑うが、マニオンはサムに見せていた微笑を決して冷淡な声で返事をした。
それが気に入らなかったのだろう、神の顔が怒りに歪む。
「使徒が、貴様のほうが気安いだろう! 俺は、剣のウィーダル! 剣の神だぞ!」
「だからなんだと言うんだ? お前たち神々は、何もできず、何も果たすことができず、死ぬだけだ。だが、安心していい。戦神はどうでもいいが、この僕が責任を持ってヴァルレイン様をこの世界にお呼びする」
「……言ってくれるじゃないか。使徒、いや、繰り上がって天使の力を持っているのか。それでも、神ではない。お前は、神ではない、マニオン・ラインバッハ!」
「……剣のウィーダル、とか言ったな。お前たち神々は、口を開けば神だ神だと言うが、まるで自分に言い聞かせるように聞こえるのは僕の気のせいだろうか?」
「貴様、よほど殺されたいと見た」
「何を言っているんだ、お前は? ここにいる時点で、殺し殺される覚悟を持っているんだ。いちいちお前に言われるまでもない。かかってこい、剣のウィーダル。お前は、前座だ」
剣のウィーダルの顔が、赤を通り越して黒くなった。
「……使徒が、使徒風情が、俺を前座と言うのかっ!」
「はぁ。そう言っただろう? 戦神にケツを振ることしかできない神との戦いなど、僕にとっては兄さんと戦うための肩慣らしだ。お前は剣士なんだろう? ならば、言葉も感情もその剣で語ればいい? いつまで喋っているつもりだ? それともそのつまらないお喋りで僕をどうにかできるのか?」
マニオンの言葉は攻撃的だった。
サムとの態度の違いに、驚くしかない。
「………………殺してやる」
「だから、早くそうしろと言っている」
ウィーダルの顔から表情が全て消えた。
腰に掲げていた剣を静かに抜き、構える。
マニオンも神剣を構えた。
「マニオン・ラインバッハ……お前の首を刎ねてやる。首から下は細切れにしてやる。安心しろ。首はヴァルレインに送り届けてやる」
「……お喋りな神だな。まだここでもお喋りするのか? それとも、お前の言葉に何か意味があるのか? ないなら早く剣で僕に向かって来い。神であるとことしか自慢することがないお前がどこまで強いのか――愛情と戦いの女神ヴァルレイン様の使徒であるこのマニオン・ラインバッハが試してやろう」




