83「マニオンが来てくれました」①
「……お前たち、許さない。僕を変態扱いし、股間を蹴り、目の前でラブコメするとか舐めやがって。めちゃくちゃにしてやる。今こそ、最凶の魔王と恐れられた僕のラッキースケベを味合わせてやる! 思い人の前でアヘ顔ダブルピースさせてやる、覚悟しろ!」
友也の魔力がかつてないほど吹き荒れた。
体内から漏れた魔力が黒い闇となり、さらに紫電が散る。
凄まじい魔力にこの場に圧がかかり空気が重くなった。
「なるほど、腐っても魔王だということか。破廉恥な男でなければ、戦神ディーオドール様に目をかけていただけただろうに」
「戦うだけしか能がないくだらぬ神など僕からごめんですよ」
「……言ってくれるな! たかが魔王が、我らの主人に!」
「神々が神を主人と呼ぶのは滑稽ですね」
友也は何度か深呼吸をして、なんとか冷静さを取り戻した。
女神の前でランドルフをラッキースケベして辱めることもできるが、そう思わせて警戒させるくらいでちょうどいい。
本来の目的は、神々を倒すことだ。
さすがの友也も、ラッキースケベだけでは相手を倒すことはできない。
「ひとりで始めるつもりか? 俺もそろそろ戦いたいんだがな」
剣を腰に構える神がランドルフに声をかける。
「好きにすればいい。私はこの魔王を殺す」
「やれるものならやってみればいいと言ってあげましょう」
ランドルフは決して友也から視線を外さなかった。
ラッキースケベを警戒しているのもあるかもしれないが、単純に戦闘能力も無視できない存在であると認識しているようだった。
「その変態は任せるぞランドルフ。俺はできれば剣士と戦いたいんだが、いないか。なら、メインディッシュのサミュエル・シャイトと戦おうじゃないか。なあ、お前、斬ることが得意なんだろう? 奇遇だな、俺も斬ることが得意で、大好きなんだ!」
「……別に俺は斬ることは好きじゃない」
よく通る神の声に、サムが返す。
「ははははは! 面白いことを言うじゃないか! 戦神ディーオドール様を、本来の力が出せなかったとは言え戦神を、何もできずに斬り殺したお前が斬ることが好きじゃないだと? 笑わせるな。サミュエル・シャイト、お前は斬ることが大好きなんだよ!」
「勝手なことを言ってくれるじゃないか、なら、お前が大好きな斬ることをその身体で味合わせてやるよ」
ウルの治療をしていたサムだが、「斬ることが好き」と言われたことに不快感を露わにした。
戦いは好きではある。それは自身の力を試したい、強くなりたいという想いからだ。
人を斬ることが好きではない。
傷つけることも、命を奪うことも好きなわけではない。
他人には同じように感じるかもしれないが、戦闘狂ではあるのと斬ることが好きであることは違う。
何よりも、目の前の神は「斬る」ことが好きなのではない。「斬り殺す」ことが好きなのだとわかる。
一緒にされたくなかった。
「まあ、落ち着け、サム」
「――ウル」
「お前が戦うまでもない。あの神が望んでいる剣士が、ほら来たぞ」
ウルの視線の先に、人影があった。
白い戦闘衣に身を包み、剣を握る青年がこちらに向かって歩いてきている。
「――マニオン」
「遅くなりました。ですが、ちょうどよかったのかもしれませんね。相手は剣士をお望みのようですから、僕がお相手しましょう」
――愛情と戦いの女神ヴァルレインが選んだ使徒、マニオン・ラインバッハが剣を抜いた。




