78「不知火、です」②
紅のグリムレンが火だるまになって地面を転がった。
何度か地面を跳ねて、動きを止めてもなお炎に包まれたままだ。
「――ま、こんなもんか」
ウルが肩をすくめると、炎が消えて右腕と右足を失いながら右半身が焼け爛れたグリムレンの姿が露わになった。
「――グリムレンっっ!」
神々が彼女に駆け寄るが、ウルは気にした様子はない。
炎の刀を消し、自身の右腕を眺めた。
神に傷を与える一撃は、ウルをも傷つけていた。
目を背けたくなるほどの痛ましい火傷を、右手から肩に、首や、頬。そして膝下に負っていた。
神と戦いこの程度の代償ならば、安いものだ。
時間はかかるが治る火傷だが、気にしない。
ウルは、反動で負った火傷よりも、実戦で初めて使った「不知火」の出来に若干の不満を覚えていた。
「ようやく私の限界が見えたな。私の魔力を超えた一撃は、当たり前だが制御ができなかった。頭から股まで一直線に斬ったつもりだったんだが、ズレるとは。サムのようにはいかないな」
炎を斬ることを同時に行うことを突き詰めた「不知火」。
炎面では満足していた。
火力も神に通じるのであれば良し。
相手が強ければ強いほど奪い食らえる力が大きいのも好感触だ。
ただ、斬る面ではいくつか改善点があった。
魔法に特化したウルだが、幼少期から剣士として優れていた妹がいることもあり、自身も「それなり」に剣術を支えたのだが、それだけだ。
ウルは剣に対し、好奇心を持てなかったのだ。
サムのように剣そのものが使えずとも、斬ると決めれば斬ることができる姿を見ていたせいか、自分もできると思っていた。
何度も炎の剣をはじめ、試行錯誤を繰り返し、斬る自信もあった。
しかし、実際は、力に振り回されてしまった。
――実に、面白い。
やはり魔法はこうでなければいけない。
最初から、すべてが思うままに成功してはつまらない。
ウルは、初めて魔法を使ったことを思い出した。
少し天狗になって、デライトに叩きのめされたことも鮮明に覚えている。
少しずつ強くなれることが楽しかった。
寝ても覚めても魔法の日々だ。
魔法が成功するたびに、笑い、喜ぶ。
失敗するたびに、悔しがり、泣き、八つ当たりをした。
魔法を学ぶことは今でも楽しい。
今日も多くの経験と学びを得た。
まだ自分に伸び代があるのだと、まだ強くなれる可能性があるのだと思うと心が躍ろう。
「やっぱり魔法って最高だよな! 紅のグリムレン、お前もそう思うだろう!?」




